残念なラブコメ（「G’sこえけん」向け増補改訂版）

残念なラブコメ（その１）「告白」（後編）

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沈黙。そうだよね。まともに話したこともない相手に、いきなり「付き合ってください」って言われても、返答に困るよね。

確かに彼は戸惑った様子。だが、しばらくたって返事をしてくれた。

「・・・光栄です。オキルさん、楽しい演技をされる方だなぁって思ってて、サークルの中でも特にファンだったんです！そんな人から好意を持ってもらえてて嬉しいです！」

あ、悪い印象じゃない・・・でも、んん？？

「次の公演も楽しみにしてます！これからも頑張ってください！！」

「あ、はい。ありがとうございます。」

あ・・？あれ・・・？・・・・・これって、

（全く恋愛対象として、みてもらえてない～～！！？）

そこで、自分が犯していたミスに気づいた。

（・・と言うか、「好きです」とは言ったけど、「付き合ってください」っていってないじゃん！！）

そんな風に心の中で凹んでも、相手が気づくはずもない。

彼は自身の腕時計を見ると、やや慌てた様子で言う。

「あ、すいません。ちょっと人を待たせているので、ここで失礼しますね。次の公演、期待してます！それじゃあ！」

「あ、はい、それじゃあ・・」

彼が立ち去る姿を見送りながらも、心は放心状態。

うん？あれ？・・これって振られちゃった感じ？

（いやいや、始まってもいない。ちゃんと言わないと！）

放心状態から無理やり自分を取り戻し、彼の立ち去った方に向かう。

ほどなく彼を見つけ、話しかけようとすると、

「ごめん、待った？」

「お～そ～い。ちょっと遅刻だぞ？」

私は慌てて物陰に隠れる。・・・また、ちょうどいい所に物陰あるなぁ。

「ごめんごめん。ちょっと、人に呼び止められちゃって」

「誰？まさか女の人じゃないよね？」

・・こ、この会話は、完全に恋人さんだよね？あああ、恋人さんいたんだぁ～・・・

私は愕然とした。・・・と言うか、無意識にそうでないと、思い込んでいたのであろう自分にも大ショック。

恋人同士と思われる会話は、まだ続いて私の耳に届く。盗み聞きじゃないよ？もし今、私に気づかれたら、ヤバい場面だからしょうがないでしょ！？

「うん。演劇サークルのオキルさんだけど、彼女に好きって言われた。」

ちょ！？それ、彼女さんに言う！！？？

まさかの彼の発言に顔面蒼白の私。だが、恋人さんと思われる女性の返答に、私はさらに驚いた！

「え！オキルちゃん！？あの子いいよね～～。羨ましい！！」

「でしょでしょ！？ちょっと、嬉しい～」

「・・・羨ましいんで、遅刻の件も含めて、今日は奢りね？」

「うわ、それは無いよ。勘弁して！」

じゃれ合いながら、そのカップルは去っていった。

・・・さて、私の今のお気持ち、わかって頂けますでしょうか？

単刀直入に言いますね。

「・・・恋敵とすら、思われないんかい！！！」

・・・こうして私の恋は、実るとか以前に、相手やその恋人さんにすら、そういった認識をされることなく、残念なまま終わりを告げたのでした・・・