考えがかわった(凛の話)
龍ちゃんは、私と拓夢が話す事を許してくれた。
もうすぐ、挙式が始まる時間だから拓夢とは別れた。
「何か、俺まで緊張してるよ」
「わかる!結婚式をしたからかな?」
「わからないな」
私は、龍ちゃんと挙式が行われるチャペルへの道を歩いていた。
「娘がいたら、龍ちゃんは泣いただろうね」
すれ違った花嫁さんを見つめながら、私は龍ちゃんを見つめていた。
結局、手に入らなかった世界の事を私はまだ考えているんだ。
「もう、ボロボロ泣いて式どころじゃないかもな」
そう言って、龍ちゃんはニコニコ笑ってくれる。
「龍ちゃん……」
「人間って、欲張りだよな!こんなに幸せなのに、別のものが欲しくなるんだよな…。ほら、今、目の前で美味しいもの食べてるのに、隣の人が食べてたのが欲しくなるみたい
な気持ち」
「隣の人の料理の方が温かくていい匂いがしてるからね」
私と龍ちゃんは、見つめ合って笑った。
「でも、食べてみると自分の好みじゃなかったりな」
「結局は、いつも食べてる味がよかったりね」
「そうそう」
私達は、経験した事がないものを想像して分かり合う事は出来ない。私と龍ちゃんの気持ちは、同じ立場の人にしかわからない。
だから、大抵の
今までの私もそうだった。
でも、拓夢や理沙ちゃんやまっつんさんやかねやんさんやしゅんさんや相沢さんや
いつの間にか、考えが変わっていた。
私の気持ちをきちんと理解してくれてる人と理解してくれてない人が存在する。
経験した事がない痛みを想像する事は、想像の枠を越えない事をより学んだ。
それは、仕方のない事なのを学んだ。
「結局、家で食べるご飯と味噌汁が一番よかったりするんだよね」
「そうだなーー。それが、一番味覚が喜ぶな」
「でしょう!」
形は違っても分かり合えるんだよって事を私に示してくれたのは、拓夢と理沙ちゃんだった。
痛みの種類は、違っても……。
分かり合える事を、私は初めて学んだ。
「緊張するね」
「何か、娘を送り出す父親の気分を味わってる気がするな!凛のお父さんもこんな気持ちだったのかな?」
「どうかな?でも、幸せになって欲しい気持ちが一番でしょ?」
「そうだな!幸せになって欲しいな!理沙さんと松田さんには」
私達は、チャペルについた。沢山の人が、もう集まっていて……。
私と龍ちゃんは、新婦側の場所に並んだ。
もうすぐ、二人の挙式が始まる。
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