結婚式に向かう車内【拓夢】
「母親だからって、呼ばなきゃいけないんだな」
しゅんは、そうポツリと言った。
「そうだな」
「お金振り込んだだろ?まっつん、先月」
「ああ、聞いた」
「いい加減、払う必要なんてないよな」
「そうだな」
「でも、まっつんにそれ言ったら、産んでくれた親だからって言うんだぜ」
しゅんは、そう言って俺を見つめた。
「まっつんは、もう大人だろ?母親なんか捨てればいいんだよ」
しゅんの言葉にしゅんの姉ちゃんが、「そんな事したら、優太は自分を否定しちゃうじゃない」と言った。
俺は、あの日の凛の言葉のように感じた。
「何で、まっつんが自分を否定するんだよ」
しゅんは、姉ちゃんにそう言った。しゅんの姉ちゃんは、こっちを振り返った。
「私は、昔、そうだったわ!お母さんとお父さんの子供じゃなかったら私は男じゃなかったのにって思った事があったのよ。それで、お母さんとお父さん何か捨ててやるって覚悟決めて家出した。しゅんがこんな小さい時よ」
そう言って、しゅんの姉ちゃんは懐かしそうに笑っていた。
「そしたらね。何故かわからないけど…。自分の事が大嫌いになったのよ。色んな部分が似てるからかな?鏡に映る自分も大嫌いになっていった」
しゅんの姉ちゃんは、そう言って悲しそうに俯いた。
「だから、親を捨てるのって凄く勇気がいるものよ。両親がいなかったら、自分は産まれなかったのよ!捨てるとか簡単に出来ないものよ。しゅんは、出来る?」
しゅんは、姉ちゃんの言葉に「無理に決まってる」と言った。
「それは、何故?お金を取らないから?でも、二人が優太のお母さんと同じだったら?」
「だから、無理だって言ってんの」
しゅんは、そう言って姉ちゃんに怒った。
「それが、答えじゃない。簡単に親を捨てれないから、みんな苦労してんのよ。優太も色々考えてんの。しゅんが決める事じゃないわよ」
しゅんの姉ちゃんは、そう言ってしゅんを諭していた。
「わかったよ。今までの自分を否定しちゃうぐらい。大変な事だって、知らなかったよ」
そう言って、しゅんは落ち込んでいた。
「そんなしんみりした雰囲気作ってどうするんだよ!結婚式だよ」
しゅんの姉ちゃんの旦那さんは、明るい口調でそう言った。
「それも、そうよね。ごめんね、しゅん」
「ううん。俺の方こそごめん」
二人は、お互いに謝っていた。
「いつか、まっつんが答え見つけるのを俺達は待っとくだけしか出来ないよ」
俺は、しゅんの肩をポンポンと叩いた。
「そうだよな」
しゅんは、そう言って笑っていた。
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