変わっていく日々【凛】

車を降りて、理沙ちゃんと歩き出す。


「凛ちゃん、出口に出れたんだね」


理沙ちゃんに顔を見つめられてそう言われた。


「そうかも知れないね。暗闇から抜け出せた気がする。理沙ちゃんも…」


「うん、抜けたよ。私も…」


そう言って、理沙ちゃんは笑った。


「優太が、もう一度プロポーズしてくれるって!」


「凄いね」


「次は、指輪してるからね」


「うんうん」


私は、理沙ちゃんにニコニコ笑った。


「凛ちゃん」


「何?」


「理沙の友達になってくれる?」


「今まで、友達じゃなかった?」


「なかった!だから、なって」


「勿論」


私は、理沙ちゃんに笑っていた。この日は、ニコニコしながら帰宅した。


「ただいまー」


「おかえり、良い事あったんだな」


「うん、あったよ」


私は、龍ちゃんに全部話した。


「ごめんね。龍ちゃんが友達やめたらって言った時は、やめれなくて…」


「あの時は、結婚してすぐだったから…。まだ、いろんな希望に溢れていたわけだから。仕方ないよ」


そう言って、龍ちゃんは私を抱き締めてくれる。


「凛が出口の見えないトンネルから抜け出せた事が、俺は嬉しいよ。もう二度と、絶望を味わう事がないと思うだけでホッとしてるんだ」


そう言って、龍ちゃんは私の背中を擦ってくれた。短いけれど濃かった私と拓夢の不純異性行為は、今日友達になるという約束を交わして幕を閉じた。

そうなれたのは、他でもない。今、私を抱き締めてくれている皆月龍次郎このひとのお陰だ。


「お風呂入ろうかな!」


「沸かしてきてあげるよ」


「ありがとう、龍ちゃん」


私と龍ちゃんの日々がまた始まる。


そして、私はSNSや妊娠に振り回される事のない日々を送り始めた。


「今日は、理沙ちゃんの式の打ち合わせだから…。晩御飯…」


「何か買って食べるよ」


「ごめんね、龍ちゃん」


「いいって!じゃあ、行ってくる」


「行ってらっしゃい、気をつけてね」


あれから、日々は移り変わり七夕の日にプロポーズを再び受けた理沙ちゃん。結婚式の打ち合わせをまっつんさんが出来ない事を聞いた。相沢さんと私が交代で打ち合わせに参加していた。そして、とうとう結婚式の三日前になったのだ。


「あー、緊張する」


「大丈夫だよ」


私と理沙ちゃんは、式場に向かっていた。


「もうすぐだよ」


「そうだよね」


「ドキドキする」


何だか私まで、ドキドキが止まらなかった。


「本当に、凛ちゃんと相沢さんには感謝してます」


「そんなそんな…」


私は、理沙ちゃんにそう言って笑った。


あれから、私は、無名のバンドのPVに数回出演したりした。そして、理沙ちゃんから拓夢が元気でやってる事を聞いていた。

私は、最後に拓夢と話して以来、絶望する事がなくなった。きっと、全てを捨てた事がよかったのだと思う。

見ないでいいものを見ない勇気を拓夢が与えてくれた。絶望を拭ってくれたのが、拓夢でよかったと本当に思っている。


最後に拓夢と交わした約束の日まで、残り三日…。私は、拓夢に再会して何を話そうかと今からドキドキしていた。


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