龍ちゃんに聞いてみる【凛】

「凛ちゃん、そしたら普通にたくむんにも会えるんだよ。世間なんて関係ないんだよ」


理沙ちゃんは、そう言って笑ってる。


「私は、不倫だけど…。理沙ちゃんは、普通に会えるんだよ?仕事じゃなくても…」


「駄目なの。それじゃ駄目なの…。世間は、許してくれない」


「理沙ちゃん……」


まっつんさんとの関係を凄く悩んだのがわかる。


「龍ちゃんに、聞いてはみるよ」


理沙ちゃんの為にどうにかしてあげたかった。


「うん。聞いて」


理沙ちゃんは、そう言ってケーキを食べてる。私は、そんな理沙ちゃんを見つめながら思っていた。世間と言う名の化け物が、理沙ちゃんの心をゴクリと飲み込んだ気がしていた。


「どうしたの?凛ちゃん」


「ううん。何もないよ」


「理沙ね、優太と結婚したかった」


理沙ちゃんは、そう言って紅茶を飲んだ。

私には、簡単に出来るよなんて言えなかった。


「優太のお母さん。理沙が嫌いなんだと思う」


「そんな事ないよ」


それが、精一杯、私が言える言葉だった。


「そうじゃなかったら、優太と理沙の話を週刊誌に売ったり何かしないよ」


「事情があったんじゃない?」


「優太のお母さんの事情は、いつもお金だよ!お金が欲しいから近づいてくるの…。たまにさ、無責任みたいにそんな人捨てたらとか言う人いるじゃない?」


「私も言っちゃうかも知れない」


理沙ちゃんは、私の言葉にクスッと笑った。


「その方がいいかもしれないけど…。優太にとっての母親は、あの人しかいないんだよ。それを捨てれば何て理沙は言えない。だって、優太を命懸けで産んでくれたのは事実でしょ?その後のやってる事は最低だけど…。それでも、お母さんを否定する事は優太を否定する事だから。優太もそれをわかってるから、無下に出来ないんだと思うんだ」


「そうだよね」


理沙ちゃんの言ってる事は、よくわかる。私だって、母親や父親を否定したくはない。例え、どんな親であっても…。二人がいなくちゃ私は、ここに生きていないわけだから…。


「だから、優太はお母さんに今までもお金渡してきてるの。今回も、優太がデビューしたのを誰かが話したんだと思うの。だから、週刊誌に売ったんだと思う」


「その人が言わなかったら、大丈夫だったんだよね…」


「そうだね。相沢さんが色々調べてくれるって優太は言ってたけど…。理沙が別れようって言ったんだ」


「理沙ちゃん、そんなの…」


「何で、凛ちゃんが泣くのよ」


ポロポロ泣いてる私を見つめながら、理沙ちゃんも泣いていた。


「ごめんね」


「いいんだけどねー」


「本当にごめんね。私、まっつんさんも理沙ちゃんも大好きだから…。二人には一緒になって欲しくて」


「凛ちゃん…」


理沙ちゃんも、ポロポロ泣きだした。


「来月、SNOWROSEのPVの撮影依頼が入ってるの」


「えっ?」


「優太に会いたいんだ」


理沙ちゃんの気持ちが痛い程、胸に刺さる。


「だって、こんな風にしかもう会えないから…。それでも、理沙。優太が好きなの」


私は、理沙ちゃんの言葉に泣いていた。


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