管理人さんにお願い【拓夢】

ピンポーン、ピンポーンー


「いたた」


昨日は、あの後シャワーを浴びて、冷蔵庫のビールを飲んだのまで覚えていた。けど、まさかこんなに飲むとは…。テーブルの空の缶ビールが8本も並んでいるのを見ながら、俺は驚いていた。


「はい」


『おはようございます。引っ越し作業に来ました』


「あー、はい」


もう、そんな時間かと思いながら玄関を開けた。


「おはようございまーす。今日は、よろしくお願いします」


「はい」


元気な三人の引っ越し作業員の声が、頭にガンガン響く。


「しんど…」


俺は、小さな声で呟いていた。


「すみません。朝から、テンション高すぎましたね」


ダンボールを届けてくれた人が、俺に話してきた。


「あっ、いやいや。すみません。昨日、飲みすぎたせいなんで…。すみません」


俺は、そう言って頭を下げた。


「そうだったんですね。お時間、大丈夫ですか?」


「あー。すみません」


俺は、その言葉にバタバタと洗面所に行く。うがいをして、顔を洗って、髪の毛をさっと整えてキッチンに行く。コップに水を入れて、飲んだ。


ゴミ袋を取って、ビールの缶を入れようとする。


「大丈夫ですよ!やりますんで」


「あっ、すみません」


「もうすぐしたら、管理人さんが来られるって聞いてるんですが…」


「あー、そうです」


一昨日、管理人さんに引っ越しの日の事を話したのを思い出した。貴重品などは、もう何も残っていない事を話した俺に、管理人さんは、それなら、代わりに対応をしてくれると話してくれたのだった。


ピンポーン


「あっ、すみません」


俺は、玄関を開けに行く。


「おはようございます。星村さん」


「管理人さん、おはようございます」


「仕事行って下さい」


管理人さんは、腕時計を見つめながらそう言った。


「すみません。これが、家の鍵になります」


「はい、わかりました」


俺は、管理人さんに鍵を渡した。


「ご迷惑おかけします」


「いえ、いえ。星村さんが忙しいのはわかっていますから、大丈夫ですよ」


「本当に申し訳ありません。あの、終わりましたら…」


「ご連絡させていただきますね」


「よろしくお願いします」


俺は、そう言って管理にさんに深々と頭を下げた。


「あっ、すみません。着替えて行かないと…」


「はい、大丈夫ですよ」


俺は、管理人さんに頭を下げるとバタバタと着替えに行く。

寝室で服を着替えた。


「すみません。ご迷惑おかけします」


俺は、皆さんに挨拶をしてからキッチンにある荷物を取った。


「大丈夫ですよ」


「お願いします」


俺は、紙袋も持った。


「管理人さん、後はお願いします」


「はい。頑張って下さい」


「よろしくお願いします」


「終わったら、ご連絡差し上げます」


「はい」


俺は、慌てながら家を飛び出した。本当は、母親に頼んでいたのだけど…。一昨日、連絡があって来れないと言われたのだった。

先に向こうに少しだけ引っ越しをしていてよかったと思った。俺は、急ぎ足で駅前に向かった。駅でタクシーに乗り込んだ。

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