凛……【拓夢】
「凛、ソファーに座ろうか」
「ひっく、うん」
凛は、泣きすぎてしゃっくりをしていた。ソファーに凛と一緒に行く。
「ちょっと待って、ヤカン止めてくる」
「うん」
俺は、キッチンに戻ってグラグラと言い出したヤカンの火を止めた。これ買ってたから、いれてあげよう。俺は、マグカップを2つ取り出してお湯で希釈する柚子レモンと書かれた液体を注ぐ。それを軽く混ぜて、凛の所に持っていく。
凛は、コートを脱いでいた。
「凛、その服」
俺は、マグカップを置きながら凛に言った。
「龍ちゃんが、着ていけって」
また、龍ちゃんと言われてしまった。
「そっか」
「ごめんね」
「謝らないで」
凛は、いつの間にかしゃくりが止まっていた。
「これ飲んだら帰っていいよ」
3ヶ月という時間が、俺と凛を引き裂いた気がして、俺はそう言って笑った。
「私、龍ちゃんに殺してって言ったの」
凛は、そうポツリと言った。
「何で?」
俺は、凛を見つめる。
「今回は、自分の中でかなり期待してた。妊娠したんじゃないかって思ってたから、その反動の大きさは凄かった。何もかも嫌になっちゃった。だから、もう自分がいらなくなっちゃったんだ」
そう言って、凛はポロポロと涙を流している。
生きろとか死ぬなとか、頭の中をぐるぐる回るのに…。そんな事を凛が望んでる気がしなかった。
「死ぬなら最後にさせてよ」
ぐるぐる回りすぎた頭から出てきたクダラナイ台詞に、俺自身驚いてしまった。
「ごめん。何言ってんだろ」
俺は、マグカップを取ってフーフーって冷ましながらゴクリと飲んだ。
「そうしたいなら、いいよ」
凛が自暴自棄になってるのが、その言葉でわかった。龍次郎さんは、凛の中にある危うさみたいなのを感じていたんだ。
生き死にだけじゃなく、こうやって誰かとしちゃいそうな危うさ。
「凛、自暴自棄になってるだろ?」
俺は、マグカップを置いて凛を見つめる。
「なってないよ」
凛は、そう言ってボロボロと泣き出した。
「今すぐ死ねたら幸せになれるか?」
俺は、凛の首に手を当てる。
「生きてる価値ある?私に」
首からゆっくりと腰まで手を滑らせて俺は凛を引き寄せる。
「あるよ」
「嘘だよ。だって、私。ポンコツなんだよ。体だけじゃなくて、もう思考さえも」
俺は、凛をソファーに押し倒した。
「ポンコツじゃない。俺にとって、凛は必要な存在だよ」
チュッ…
「拓夢」
「今日は、満月だって!見よう」
俺は、おでこにキスをして凛を起こした。
「どうして、しないの?」
凛の言葉に、俺は凛の頬に手を当てて涙を拭う。
「今の凛を抱いても、俺、むなしくなるだけだよ」
凛は、俺の言葉に頬に当てた手を強く握りしめてくる。
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