エピローグ~月と星が交わる場所へ~【凛と拓夢の話】
ほら、もう行きなよ(凛の話)
「泣かないでいいんだよ!凛」
そう言って、龍ちゃんは涙を拭ってくれる。
「龍ちゃん、私」
決めた覚悟が揺らぐのは、龍ちゃんをちゃんと愛してるから…。
「大丈夫だから…。俺は、凛を信じてるから、ほら早く着替えないと…」
龍ちゃんは私の手をひいて寝室に連れていく。
「どれだっけ、あった!これだ!はい、これを着て会いに行くんだよ!ほら、早く」
そう言って、龍ちゃんは、あの日、拓夢にもらった服を私に差し出してきた。
「龍ちゃん、私…」
「俺が、許すんだよ」
その言葉に、私は大人しく服を着替えた。
「風邪ひくから、コートもちゃんと羽織って行くんだよ」
「ありがとう」
「じゃあ、気をつけて行っておいで」
龍ちゃんは、玄関まで見送ってくれて、私にコートをかけてくれる。
「龍ちゃん、ありがとう」
私は、スマホを取って玄関で、モコモコのブーツを履いた。
「振り返らずに行くんだ!俺の事は、気にしないで走るんだ」
私は、その言葉に頷いて玄関の扉を開けた。外に出て、「龍ちゃん、ごめんね」と呟いて家の鍵を閉めてから、走り出す。
私、ちゃんと帰ってくるから…。
でも、私……。
今は、拓夢に、会いたい。
会って、この痛みを悲しみを忘れてしまいたい。
ごめんね。
龍ちゃん。
ごめんね。
私は、泣きながら駅までの道を走った。電車で切符を買って、改札を抜ける。ホームに降りると【行きなさい】と行ってるように電車が停まっていた。
私は、電車に乗って拓夢のマンションの駅で降りた。階段を駆け上がり、改札を抜けて、私は必死で走った。
ピンポーンー
ガチャ…。
扉が開いて、私は玄関に入った。
「来ないかと思った」
玄関に入った瞬間に拓夢は、私を抱き締めてきた。
「来るつもりは、なかったの…」
「何で来てくれたの?」
「龍ちゃんが、何度も行きなさいって言うから…」
私の言葉に、拓夢は「凛の旦那さんには、敵わないよ」と言った。
「久しぶりなのに、龍ちゃんの話なんかしてごめんね」
拓夢は「ううん」と言って私から離れる。
「中で、話そうか」
「うん」
私は、靴を脱いで上がる。久々の拓夢の家だった。
「久しぶりのこっち?」
「ああ、うん。やっと休み」
「芸能人だもんね。凄いね」
「凄くないよ」
キッチンにつくと拓夢は、ヤカンに水を入れて火をつけてる。
「かわいい人、多いでしょ?芸能人って綺麗だよね。ほら、テレビで見ても…」
私の言葉に、拓夢は私に近づいてきた。
「何が言いたいの?」
そう言って、拓夢に顔を覗き込まれる。
「不倫なんかより、素敵な出会いがあるって事だよ。私、やっぱり帰るね」
拓夢に迷惑をかけたくない気持ちと龍ちゃんを裏切りたくない気持ちが交互に押し寄せてくる。拓夢は、私の事を引き寄せて抱き締めてくる。
「忘れたい事があるから来たんだよね?」
その言葉に私は、ポロポロと泣いていた。
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