龍ちゃん……。【凛】

そんな日々を過ごす中で、突然拓夢から連絡がやってきた。

拓夢との電話が切れた。無理に決まってる。拓夢は、せっかくデビューが出来た。あんなに、世間に咎められたの…。


ガチャ……。


「おかえりなさい」


自分で何とかしなきゃ駄目なんだから…。いつまでも、塞ぎこんでるから理沙ちゃんがきっと心配して拓夢に伝えたのかも知れない。


「ただいま」


キッチンに向かおうとした私の腕を龍ちゃんが掴んだ。


「何?」


「行っておいで」


「何の話?」


「電話聞こえてたんだ。星村さんと話したんだろ?」


「龍ちゃん」


「行っておいで」


私は、龍ちゃんの手を離した。


「無理に決まってるでしょ」


「それは、俺を気にして言ってる?」


「違う、違う。そんなんじゃない」


龍ちゃんは、私を抱き締めてくる。


「俺じゃ拭えないんだろ?その痛みや悲しみを俺は拭えないんだろ?」


「大丈夫だから、龍ちゃん。私、行かないから」


「会ってくれって、俺が星村さんに手紙を書いたんだ」


その言葉に私は固まった。


「龍……ちゃんが…?どうして?」


「あの日の蓮見との事とか、美沙さんとの教えてくれなかった事とか、それ全部。俺が星村さんに言った。凛が殺して欲しいって言ってからどうするか考えて…。それが一番凛の為になるって俺思ったから」


龍ちゃんの言葉に私は、泣きながら話す。


「何で?もう何も言わないって、無理に俺の傍にいなくていいよって…。そう言ってたから、手紙出したって事?龍ちゃんは、私をいらないって…」


龍ちゃんは、「違うよ」と大きな声で言った。


「違うよ。凛がいなくならないって、俺わかってたから手紙を書いたんだよ。絶対に戻ってくるって思ってたから書けたんだよ。だって俺は、今でも凛の苦しみを拭ってやれないから…」


「龍ちゃん…私行かない」


その言葉に龍ちゃんは、優しい言葉で話す。


「あの日みたいに、凛には笑っていて欲しいんだ!何もかも吹っ切れたみたいな顔して帰ってきてくれたあの日みたいに…」


龍ちゃんは、そう言ってから私の顔を覗き込んだ。


「星村さんに抱かれて忘れられるなら、それでいいと思った。キスしたって、抱き締められたっていいから…」


「龍ちゃん、何言ってるの?」


龍ちゃんは、私の手を握りしめる。


「俺ね、星村さんには感謝しかしてないんだよ!凛、また殺して欲しくなるだろ?」


龍ちゃんは、私の危うさをちゃんとわかっていた。


「ならないよ…龍ちゃん」


龍ちゃんは、私の涙を拭って笑う。


「行っておいで!凛」


「駄目、駄目だから…」


龍ちゃんは、私に優しく笑ってくれる。


「これから、もっと忙しくなったら星村さんにはもう会えなくなるんだよ!だから、行ってきな」


「龍ちゃんをもう裏切らないって決めたの」


龍ちゃんは、私の頭を優しく撫でる。


「大丈夫だから…。これは、裏切りじゃないから俺が望んだ事だから」


私は、龍ちゃんの言葉に拓夢に会いに行くのを決める事しか出来なかった。

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