いつか、また【拓夢】

暫くして、まっつんの最寄りの駅につく。


「拓夢。全然違うとこで降りるぞ」


まっつんの言葉に周囲を見ると、俺達を数人がチラチラと見ている。


「わかった」


俺とまっつんは、お互いにしかわからないような声で話す。


「次で降りるぞ」


「わかった」


まっつんの言葉に俺はそう言った。次の駅に電車がついた。

発車のベルが鳴った瞬間にまっつんが、「行くよ」と言って俺達は急いで降りた。

俺達を見ていた数人は、えっ?て顔をして驚いていた。


プシュー


扉が閉まって、電車はすぐに出て行った。


「拓夢、降りれてよかったな」


そう言って、まっつんはガッツポーズをした。


「まっつん、俺達。いっきに世界が変わるかもな」


俺の言葉にまっつんは、「ああ」と頷いていた。


「わかってるけど、やっぱり俺。寂しいな!凛の赤ちゃんが出来ない苦しみを拭ってあげたかったから…」


「そうだよな」


「うん」


俺とまっつんは、歩き出した。改札に繋がる階段を歩く。


「拓夢」


「なに?」


「いつか絶対!凛さんとまた会えるって」


そう言って、まっつんは俺の背中を叩いた。


「次、会った時に笑えるように背筋伸ばして前だけ見とけよ」


「痛いよ!まっつん」


「ハハハ、ごめん」


まっつんは、そう言って笑った。


「まっつんも、理沙ちゃんにいつか会いに行くのか?」


まっつんは、俺の言葉に俺を見つめてきた。


「いつか、また。理沙に会いに行く!そん時は、108本の薔薇の花束抱えて行くわ」


「それって!」


「みなまで言わせんなよ」


まっつんは、肘で俺をつついてきて笑った。


「了解」


10年前、プロポーズする時は、108本の薔薇の花束抱えて言いますとSNOWROSEのメンバーに突然話したまっつん。みんな、何宣言だよって大笑いしてたっけ…。


「なあ!拓夢」


俺は、まっつんの言葉にまっつんを見つめていた。


「なに?」


「売れような!相沢さんが、俺達にすげーバトン渡してくれたんだ。だから、俺達はそれを落とさず走ろうぜ」


「そうだな」


「大丈夫!SNOWROSEならやれるって」


「うん」


まっつんと俺は、笑い合いながら改札にたどり着いた。



あれから、3ヶ月。俺達は有名になり、いっきに日々を駆け抜けていった。あっちには、中々帰れなくて…。休みなしで、毎日毎日働いていた。でも、それが全然嫌じゃなくて楽しくて…。


二枚目のCDの収録を控えた俺達は、やっと休みをもらえる事になった。季節は、もうすぐ春へと移り変わろうとしていた。


まだまだ、寒いけど…


俺達は、仕事を終えて帰り支度をし始めたんだ。

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