SNOWROSEの為に……(凛の話)

「私と夫が、協力すればどうにかなりますか?」


私の言葉に、相沢さんは顔をあげる。


「SNOWROSEを売り出す為に、智天使ケルビムの力が必要不可欠なんです。そして、智天使ケルビムのボーカルは、お二人から、この記事のお話を聞いて決めると言っていまして」


「私と主人の答え次第では…」


相沢さんは、私の目をしっかりと見つめてこう言った。


「SNOWROSEは、12月25日のデビューイベントが終わり次第、契約解除になります」


「そんな……」


私は、泣きながら相沢さんを見つめた。


拓夢が叶えたかった夢が…。この手からすり抜けていってしまう。


「凛さん、お願いできますか?」


「勿論です」


私の言葉に相沢さんは、にっこりと微笑んだ。


「よかった。凛さんをお待ちしていて」


「はい」


相沢さんは、タブレットを鞄にしまうと「星村君とは、もう会っていないのですか?」と聞いてきた。


「はい」


「そうですか…」


「何かありましたか?」


「いえ。何もありませんよ」


相沢さんは、そう言って笑って運転席を降りた。そして、後部座席を開けてくれた。


「では、また日にちが決まりましたら教えていただけますか?」


「わかりました」


私は、相沢さんから名刺を差し出されて受け取った。


「あの、凛さん」


「はい」


「星村君との時間は、幸せでしたか?」


私は、相沢さんの問いに満面の笑みで「はい」と言った。


「それなら、よかったです」


相沢さんは、そう言ってニコニコ笑って頭を下げた。


「お気をつけて帰って下さい」


「はい、さようなら」


私は、頭を下げてから歩き出した。


相沢さんの言葉に、私は拓夢の事が気がかりになった。

途中で止まって、スマホを取り出した。


星村拓夢の番号を見つめる。駄目、駄目。

私は、拓夢の番号を閉じて、理沙ちゃんへメッセージを送った。


そのうちくるかな…。私は、駅前にある凛君の働いてるスーパーにやってきた。

もう、夏はとっくに過ぎているから凛君はいないはず。


「凛さん……」


スーパーに入ろうとして、声をかけられて振り返った。


「凛君」


「元気だった?」


「う、うん」


「ちょっといいかな?」


「えっ?」


凛君は、私の手を引いて行く。


「何?離してよ」


凛君は、私の言葉にスマホを取り出して画面を見せてくる。


「美沙さんって知ってる?」


「えっ!あっ、うん」


「やっぱり…」


凛君は、そう言うとまたスマホの写真を見せてくる。


「蓮見が話してるの見たんだ。だから、蓮見の父親を操ってたのあの人じゃないかと思って」


凛君の言葉に私は、「そうだと思うよ」と言った。


凛君は、驚いた顔をしながら私を見つめている。

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