拓夢と龍ちゃんからのメッセージ

スマホを見つめて拓夢にメッセージを送ろうと思っては、ホームボタンを押す。


それを、何度も何度も繰り返していた。


理沙ちゃんからのメッセージは、もう来なくなって…。きっと、まっつんさんが帰宅したんだと思った。


「はぁー」


大きなため息を一つついて、私は布団にゴロリと寝転がる。


龍ちゃんの元に帰ってきたら、拓夢に連絡をしたくてしかたなかった。


ブー、ブー


私は、スマホを開いた。


【写真、もらったから!あげるよ】


そう言って、拓夢が送ってきたのは金魚鉢にキスをしてる私と拓夢だった。


「綺麗」


私は、その写真を指でなぞる。涙が流れてくる。


ブー、ブー


【まだデビューしてないから!いつでも、連絡していいから!俺は、今帰ってきたとこ】


【お帰り】


私は、それしか送れなかった。拓夢の声を聞いちゃったら、泣いちゃう。


だから、無理だよ。


番号を出して、発信ボタンを押そうとしてはやめるのを繰り返していた。


ブブ


私は、その音にスマホを見つめる。


私は、嫌な予感がして見るのをやめる。

やってきたのは、SNS通知だった。


もしかして、雪乃かも知れない。嫌、別の誰かかも…。


また、赤ちゃんが欲しくなっちゃう。


頭の中をもう二度と真っ白に出来ないのに…。なのに、こんなのみたくない。


ブー、ブー


【めちゃくちゃ綺麗だから、もらっちゃった】


そう言って、拓夢が写真を送ってくる。


「みんなで、撮ったやつだ」


SNOWROSEのメンバーと理沙ちゃんと私の写真だった。

私は、その写真を見ながら泣いていた。

楽しかった。

ずっと、ここにいたいぐらい楽しかった。

龍ちゃんと過ごしたいのに、また赤ちゃんが欲しい気持ちがやってくる。


「怖いよ。龍ちゃん、拓夢。私、怖い」


こんなに幸せな日々から、絶望に落ちていきたくない。


ブー、ブー


【先に、歯磨いていい?】


龍ちゃんからのメッセージがやってきた。スマホの画面が涙で滲んでいく。


【うん】


私は、それだけを送った。


【じゃあ、先に磨かせてもらうから!凛、泣いてなかったらいいけど…。大丈夫かな?】


私は、そのメッセージに泣いていた。

龍ちゃんは、ちゃんと私の事を見てくれている。そんなのずっと知っていた。


そんな事わかっていたのに…。


わかってるのに…。


どうして、私は龍ちゃんを裏切っちゃったのかな…。


【凛が笑えるなら、それだけで俺は幸せだよ!凛が笑顔になれる事を沢山して欲しい】


【ありがとう】


私は、龍ちゃんにそうメッセージを送った。


ブー、ブー


【凛が幸せな気持ちで過ごせる日が沢山くるように…。出来る事をしたいよ】


拓夢からのメッセージに泣いていた。


私、龍ちゃんにも拓夢にも大切にされてる。それだけで、充分なはずなのにね…。私は、スマホを抱き締める。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る