幸せすぎる時間…

気づくと二人で、ベッドに寝転がっていた。あの後は、無我夢中で抱き合っていた。説明なんて、出来ないぐらいに凛を抱いた。


凛は、俺の腕に頭を置いて抱きついていた。


「拓夢、幸せだよ」


「俺もだよ」


俺は、凛の髪を優しく撫でる。もう二度とこうなる事は出来ない。


「最後なんて、嫌だね」


凛の目から流れる涙を見つめていた。


「もっと、愛し合いたかった?」


「わがままだよね」


「ううん。俺も同じ気持ちだよ」


不倫関係に、未来などあるはずはない。


「ごめんね。私が、拓夢を…」


俺は、凛の唇に指を当てる。


「言わないで!選んだのは、俺だから」


その言葉に、凛の黒目が揺れるのがわかる。


「拓夢、愛してる」


「俺も、愛してるよ!凛」


その愛が、どんな愛かは俺は知らない。ただ、皆月龍次郎あのひとが凛から受け取っている愛とは違う事を俺はちゃんとわかっている。


「もっと凛のここを真っ白にしてあげたかった。子供を考えないようにしてあげたかった。メジャーなんて叶えなければ…。夢なんて捨てれば…。俺は、凛と…」


凛は、俺の唇に指を当てる。


「それ以上言わないで!もう、充分だよ。私は、拓夢のお陰で、たくさん前を向けるようになったから」


涙で、凛が滲んでく。


「今日を特別な1日にしよう」


俺は、涙で濡れた顔で笑って見せる。


「ハンバーグの作り方、教えてあげる」


凛は、そう言って俺の涙を優しく拭ってくれる。


「教えて!凛の味を覚えておきたい」


「いいよ」


凛の頬に手を当てると頬が濡れてるのがわかる。凛も泣いてるんだ。俺だけが、悲しいわけじゃない。


「じゃあ、作ろう」


「うん」


俺と凛は、起き上がる。服を拾い集めて着る。ベッドから降りて、キッチンに並んで行く。凛と俺は、キッチンで手を洗う。俺は、凛の手を握りしめて後ろから抱き締めて洗う。


「こしょばいよ」


「イチャイチャしながらしたいから」


最後なら、思いっきりバカップルでいようよ!凛も、それに答えるように手を洗う。


「じゃあ、先生!料理を教えて下さい」


「わかりました」


凛は、そう言って冷蔵庫から食材を取り出す。


「玉ねぎのみじん切りは、拓夢さんは出来ますか?」


「どうでしょう?やってみます」


「はい」


俺と凛は、ニコニコ笑いながら料理教室を始める。


「玉ねぎは、こうやって」


「うんうん」


幸せな時間が過ぎていく。


「まあ、いいでしょう!」


ボールにミンチ、卵、パン粉、玉ねぎをいれる。


「私は、飴色にしないの!お肉を、よくこねるのが私のハンバーグのポイントだよ」


そう言って、凛はボールに手をいれる。


「待って、こねかた教えて」


俺もボールに手をいれる。凛は、俺の手を握りしめる。


「こうやって、こねていくの!粘り気がでるまで」


凛と一緒に、ハンバーグを混ぜる。


「出来たら、こうやって両手を使って形を作って!フライパンに並べて、凹ませるの!やってみて」


「はい、先生」


俺は、凛の動きを真似しながらハンバーグを作った。楽しくて幸せな時間がゆっくりと過ぎていく。

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