駅前のカフェで朝食
「外側サクサクなのに、中モチモチだね」
「そうだな」
「後、ミミ苦手だったけど柔らかくて美味しいね」
「それわかる!カリッとしてんのにミミは柔らかいよな」
そんな話をしながら、二人で食べる。テーブルの下で、足がぶつかる。拓夢がいるんだって、思って安心する。あの日、ステージの上にいた、手の届かない拓夢じゃなくて…。ちゃんとそこにいる。
「ごめん。足当たった」
「ううん。大丈夫」
もっと感じたい。今日だけは、もっと拓夢を感じていたい。
「美味しすぎて、早くなくなるわ!凛は?」
「美味しいよ!凄く」
「このスクランブルエッグがさ、また絶妙な柔らかさと固さでこのパンにあうよな」
「うん」
「このベーコンもいい感じだよな」
「うん」
私は、拓夢の食レポを聞いていた。
「凛、楽しい?」
「うん」
私は、ニコニコ笑いながら聞いていた。拓夢と過ごす日々は、楽しい。龍ちゃんと結婚してすぐを思い出す。私は、ミルクティーにガムシロップをいれてストローでかき混ぜる。
「凛の人生の1ページにいる事が出来て嬉しい」
拓夢は、そう言ってニコニコ笑ってる。
「私だって同じだよ」
交り合う事のなかった私達を出会わせてくれた運命に感謝してる。
『ごちそうさまでした』
私と拓夢は、同時にそう言った。
「じゃあ、行こうか!時間がなくなっちゃうから」
「うん」
私と拓夢は、立ち上がった。お会計をする。迷わず拓夢が出してくれる。
「ありがとうございました」
店員さんにお辞儀をされて、お店をあとにした。拓夢は、切符を買いに行ってくれる。
「はい」
「ありがとう」
まだ、手を繋ぐ事は出来ない。改札を抜けて、ホームにやってくる。
「まだ、だなー」
「うん」
電車が来るまで、まだ10分はある。電車のベンチに並んで座る。
「あっ!ごめん」
「ううん」
体がぶつかって、拓夢は謝ってきた。触れたいけど、触れられない。それが、こんなにも、もどかしい事を忘れていた。
「ずっと、最近は当たり前みたいに凛に触れてたから…。こんな状態って辛いな」
私が考えてる事を口に出してくれる拓夢が好き。
「そうだね」
「早く電車に乗って、
「うん」
「そしたら、気にせず過ごせるのにな」
「うん」
拓夢は、切なそうな目をしながら私を見つめる。私も同じように見つめていた。
「もう、来るよ」
そう言って、拓夢は立ち上がった。私も立ち上がる。
ガタンゴトンー
電車がホームにやってくる。私と拓夢は、電車に乗る。
「そこ座ろうか?」
「うん」
ラッシュは、過ぎてるから…。私達は、席に座れる。座った瞬間に、手が当たる。
「ごめん」
「いいって」
気にしなくていいのに、私だってそうしたい。拓夢と手を繋ぎたい。
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