エピローグ【拓夢の最後の話2】

どうして、なのだろうか?

「お風呂沸いたって」


「うん、行く」


凛が、蓮見を庇う理由が俺には思い付かなかった。だけど、それを聞く勇気もなかった。


凛と一緒に洗面所に来る、凛はさっき渡した服を洗濯機の上に置いてる。


「凛」


「何?」


「電気消そうか?」


「あっ、うん」


俺は、電気をパチンと消した。凛のブラウスを脱がして、ブラジャーのホックをはずす。この先、どんな事が起きても俺は凛の一番の味方でいたい。


「ありがとう」


凛は、そう言って笑った。闇に目が慣れてくると、うっすらと凛が見える。


「明後日、撮影終わったら帰るよな?」


凛は、お風呂場に入る。俺も服を脱いでついていく。


「うん。龍ちゃんと話ししたいから…」


「俺も、蓮見の娘に会ったりするよ」


「急がなくてもいいよ。今日、来たわけだし」


凛は、そう言って湯船のお湯を洗面器ですくって体にかけている。


「俺も貸して」


「うん」


チャポンと湯船に凛は入る。俺も、体を流してから湯船に入った。


「こんな風に過ごすのも、後二日だね」


「そうだな…」


「拓夢は、どんな人と一緒になるのかな?」


「ならないよ」


「なるよ」


俺は、凛の手を握りしめる。


「俺は、そんな話はしたくない。だって、俺は、今、凛が大切だから…」


「ありがとう」


凛が泣いてるのがわかる。このまま、一生傍にいたい。


「拓夢、今から話す事はね」


「うん」


「私の勝手な考えだから」


「うん」


「極論が過ぎるって思って聞いてくれる?」


「わかった」


そう言うと、凛は俺の手を握りしめてくる。


「私がね、龍ちゃんと別れて、拓夢を選んだとしてもね」


「うん」


「辿る結末は、同じなんだと思うの」


「そんな事…」


「あるんだよ」


凛は、そう言って笑ってるのがわかる。


「誰と一緒になっても、私の結婚生活は同じなの。勿論、結婚をせずにいるなら違うよ。だけど、結婚は同じ。何故だかわかる?」


「わからない」


俺は、凛の手を自分の頬に持っていく。


「私がね、変わらないからだよ」


凛は、そう言って俺の頬を撫でる。


「相手が代わっても私は変わらない。だから、私の結婚生活は同じなの。拓夢を選んでも、私はまた逃げたくなって…。次は、凛君とそうなるかもしれない。私が、変わらない限り…。相手を変えても同じ事を繰り返すの」


「凛……」


俺は、凛の手の甲にキスをする。


「だけどね、39年も生きてきた性格がね。たった、数ヵ月や数年で代わるなんて事はないの。人間ひとが代わるなんて…。死にかけない限りあり得ないから…」


「確かに、そうかもな」


それは、わかる。簡単に性格や考え方が変わるなんてあり得ない。


「私は、何十年先も変わらない。だから、どの人を選んでも…。私の化けの皮が剥がれれば、結局龍ちゃんと同じ結婚生活をするの」


そして、凛は左手で俺の右手を掴んで自分の頬に当てる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る