私が守らなくちゃ…

拓夢が、いなくなった。私は、蓮見君を警察につき出せなかった。龍ちゃんと拓夢を守りたかった。それと、龍ちゃんにここにいるのをバレる気がした。


拓夢が戻ってきて、私は綺麗にして欲しいと懇願した。私のせいで、拓夢の人生がどうにかなったらと思うと不安だった。


不倫は、致命的。これから、デビューする拓夢にとっては、絶対に出てはいけないスキャンダルだった。


「凛、大丈夫?」


「もう、大丈夫」


「それなら、いいけど」


「拓夢のお陰で、大丈夫だよ」


「シャワー浴びようか?」


「うん!あっ、晩御飯の材料しまわなくちゃ」


「卵は、なくなっちゃったから、明日買ってこようか?」


「大丈夫!私が、明日行くから」


拓夢は、私の頭を撫でる。


「蓮見が、また来るかもしれないだろ?」


「大丈夫だよ!来ないよ」


「本当に?」


「本当に…」


何となくだけど、蓮見君は、もう来ない気がしていた。


「じゃあ、お風呂沸かしてくるよ」


「拓夢」


「何?」


「理沙ちゃんが、もうすぐ来るから…」


「わかった!理沙ちゃんには、何も言わないから…。大丈夫だから」


そう言って、拓夢は笑ってから部屋を出て行った。


ごめんね、拓夢。


私は、拓夢に話せなかった。蓮見君に言われた事を…。何も、言えなかった。


私は、服を整えて立ち上がる。「龍ちゃん」そう呟いて泣いていた。


龍ちゃんと結婚する私に、蓮見君は何度も言った「あいつを殺していい?」その度に、拒めなくて受け入れるしかなかった。


どうして、また私の人生に現れるの…。引きちぎられたボタンを拾いながら泣いていた。


「凛、お風呂沸かしてきたよ」


拓夢は、そう言ってフワリと私を抱き締めてくれる。


「大丈夫、大丈夫。俺が何とかするから」


「ごめんね。私、警察に…」


「言いたくない理由があるんだろ?」


私は、その言葉に頷いた。


「それなら、仕方ないよな」


拓夢は、そう言って笑ってくれる。


「ごめんね。いつか、必ず話すから…」


「いいって!気にしないで」


拓夢は、そう言って頭を優しく撫でてくれる。


「あっ!服だな!俺のでいいかな?」


「あっ、うん」


拓夢は、私にTシャツと短いズボンを渡してくれる。


「これでいい?」


「うん。お風呂から入ったら着るね」


「うん」


私は、ポケットにボタンを入れて歩きだした。

玄関の靴は、綺麗に直されていた。私は、鞄をとってから玄関に行ってビニール袋を取って持って行く。キッチンの椅子や机も拓夢が整えてくれていた。



どうして、蓮見君が私と拓夢の事を知っていたのだろう?


だって、あの日、蓮見君の娘が見せたのは、凛君との写真だった。


なのに、何故?


拓夢の事を知っていたの?


誰に、雇われたの?


私は、冷蔵庫に食材をしまった。


【お風呂が沸きました】


その音が、響き渡っていた。


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