管理人さんからの連絡

凛に見送られて、俺は出勤した。会社につくと溝口が車の鍵を持ってきてくれてパンケーキの店に行く。


ブー、ブー


「出てもいいですよ」


「ごめん」


俺は、電話に出る。


『もしもし、管理人ですが…』


「はい」


『あの、本日の昼には伺いたいのですが、ご都合いかがですか?』


「何とか調整してから、折り返します」


『わかりました。よろしくお願いします』


俺は、管理人さんの電話を切っていた。


「あのさ、溝口。今日、直帰可能かな?」


「芸能事務所からの用事ですか?」


「嫌、管理人さんが来るんだよ!ポスト直しに」


「ポストですか?」


「うん、壊れちゃったやつ」


溝口は、何かを少し考えてる。


「いいっすよ!課長には、体調不良で帰ったって言っときますから」


「悪いな」


「全然!ポストの方が大事ですよ!だって、先輩、都会(あっち)に行かないと行けないでしょ?だから…」


そう言って、溝口は笑ってくれた。


「ありがとう、恩に着るよ」


「全然ですよ」


溝口と俺は、パンケーキの店について、溝口への引き継ぎを済ませた。


「先輩、もう行って下さい」


「ありがとう、じゃあ」


時刻は、11時を回った所だった。俺は、駅に向かいながら管理人さんに連絡する。


『星村さん、今、連絡しようと思ってたんです』


「何でしょうか?」


『隣の伴さんがね。星村さんの家から叫び声がしたって言うんですよ!で、今、来たら卵が落ちてましてね』


俺の足は、自然と早くなっていた。


「はい」


『インターホン押しても誰も出ないし。星村さん、一人暮らしでしたよね?』


後ろで、隣人の声が聞こえる。「だから、さっき凄い、音した。女が叫んだ」俺は、駅ですぐにタクシーに乗り込んだ。


「すぐ帰ります」


『わかりました』


タクシーに行き先を伝える。嫌な予感がする。凛のスマホにかけるけど、呼び出し音がかかるだけで出ない。心臓がドキドキとうるさいぐらいに音をたてる。


「すみません、これで」


俺は、財布から五千円を取り出した。


「お釣りね」


「いりません、降ろして下さい」


タクシーの運転手が扉を開けてくれる。


「お釣り」


「大丈夫ですから」


俺は、走って階段を上がっていく。


「はぁ、はぁ、はぁ」


「星村さん、すみませんね」


「大丈夫です」


玄関の前に、卵が落ちて割れている。俺は、鍵を開ける。


ダンッ…


「管理人さん、これどうすれば?」


チェーンが、掛かっているのが見える。


「あー、これ持ってきてくれてよかった。星村さん、すみません」


管理人さんは、そう言ってチェーンを切ってくれる。


「待ってます」


管理人さんと隣人は、外で待ってると言った。俺は、急いで家に入った。

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