凛と買い物に行く

俺達は、駅に向かって歩く。


「拓夢、迷惑かけてごめんね」


「迷惑なんかじゃないから」


俺は、凛の手を握りしめる。凛も握り返してくれる。もういいや!写真、撮られたって構わない。俺は、凛には幸せで笑っていて欲しい。


「撮影楽しみだね」


「うん、楽しみだな」


「拓夢」


「何?」


「来てくれて、ありがとう」


「気にしないでいいって!」


「拓夢も掲示板大変なんでしょ?」


「あー、あれはもう大丈夫だよ!相沢さんが、消してくれたから」


「そうなんだね!それなら、よかった」


凛は、そう言ってくれる。まだ、笑えていないみたいだった。


「凛、ごめんな。俺とこんな関係になったせいで…」


「拓夢のせいじゃないよ。私が、龍ちゃんと結婚する前に蓮見君とあんな事したから…」


「それは、凛が望んでやったわけじゃないだろ!脅されてやったんだから」


「関係ないよ。あの子には、そんな事関係なかったんだよ」


「だからって、凛の幸せを壊す権利なんてないだろ!俺、許せない。凛の旦那さんに直接言いに行くとか有り得ないから」


「それだけ、彼女が傷ついたって事だよ」


「凛」


駅に近づいたから、凛はそっと手を離す。離れた瞬間がもどかしい。凛は、切符を買いに行く。


「はい、拓夢」


「ありがとう」


「ううん」


改札を抜けて、ホームに降りる。ただの友人みたいな関係なのが寂しい。でも、仕方ない。これは、俺の為でも凛の為でもある事だから…。


「電車ちょうど行っちゃったね」


「本当だな」


電車は、目の前でいなくなってしまった。


「お水買おうかなー」


凛は、自動販売機に行く。俺もついていく。


「まだ、日中は暑いよねー。何か飲む?」


「うーん、お茶でいいかな」


俺は、小さな緑茶のペットボトルを指差した。


「はい」


「ありがとう」


凛は、お水を買ってる。


「あのさ」


「うん」


「連絡は、しといた方がいいよ」


「うん、わかってる」


凛は、そう言って俺を見つめる。俺達は、何も話さずにホームのベンチに座る。次に会うのは、PV撮影だと思っていただけに…。俺は、少し嬉しかった。


ガタンゴトンー


電車がやってきた。


「乗ろうか」


「うん」


凛と俺は、電車に乗り込んだ。二駅は、あっという間についた。


「駅前だっけ?」


「ちょっと歩くかも」


「じゃあ、行こう」


並んで歩く。通りすぎる人達は、俺達が不倫をしているなんて思っていないだろう…。階段を上がり、改札を抜ける。そこは、駅から10分程、歩いた場所にあった。


「じゃあ、買ってくるね」


「うん、待ってる」


俺は、凛が買い物を終わるまで待っていた。

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