やる事は、汚いな

まっつんと俺は、並んで歩きだした。


「智の事、呼んでるんだ」


「いつもの場所?」


「うん」


駅について、切符を買って、改札を抜ける。


「もうついてるみたいだから…」


「わざわざ、休んだのか?智」


「奥さんの病院ついてく為に休んでたらしいから」


「それなら、いいんだ」


「そうだな」


電車がホームに入ってきて俺達は乗り込んだ。


「本当にまっつんは、智だって思ってる?」


「思ってるよ」


まっつんは、俺を見ずにそう答えた。


プシュー


扉が閉まって、電車は動き出した。


「俺は、智だって信じたくないよ」


「好きにすればいい。本当の事は、もうわかるから」


いつもと違って、まっつんは冷たい。


「あのさ、まっつんのお母さんの事…」


「気にしてないよ」


「あんな風に言われて、何かごめん」


「別に、拓夢のせいじゃない。あの人は、そんな人間だから」


特急電車に乗ったお陰で、行きよりもつくのが早かった。俺とまっつんは、電車から降りていつもの場所に行く。


「いらっしゃいませ」


「珈琲でいいか?」


「うん」


「珈琲、二つ」


「わかった。後で持ってく」


まっつんの仲良しの店員さんは、そう言って笑ってた。


ガチャ…


扉を開けると智が座っていた。


「煙草、また吸ったのか?」


まっつんは、煙をはたく仕草をしながら中に入る。


「悪い、色々ストレスでな」


そう言った、智の顔は一切笑顔が浮かんでいなかった。


「珈琲、どうぞ」


「ありがとうございます」


入り口にボッーと立っていた俺に店員さんは、珈琲を渡してくれた。俺は、それを受け取って中に入った。


「拓夢、不倫してるらしいなー。スパー」


智は、俺を見るなりそう言って煙草を灰皿に押し付けた。


「相変わらず、お前がやる事は汚いな」


道端に落ちてるゴミでも拾うような目を智は俺に向けていた。


「どういう意味だよ」


俺は、珈琲のトレーを落としそうになるのを必死で握りしめる。


「もらうよ」


まっつんは、そう言って俺からトレーをとって机の上に置いた。


「あれー、まっつん。本当の事言わないわけ?なぁ!俺だけ悪者にしたいの?」


「別に」


そう言いながら、まっつんは珈琲にガムシロップとミルクを入れてかき混ぜてる。


「さっきから、何の話してるんだよ!」


「あー、めんどくさいから言うけど!あれは、俺とArtemisのファンで立ち上げた掲示板なわけよ」


「智?」


ブー、ブー


「ごめん。理沙からだから」


まっつんは、そう言って部屋を出て行く。


「何で、そんな事するんだよ」


俺は、智の胸ぐらを掴んでいた。


「きたねー、手で触んなよ!まっつんの母親と寝たくせに、嘘ついて居続けたこの詐欺師がよ」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る