売り方次第…

「そんな考えはよくないと社長と我々は何度もトーゴに言ったんだけどね。何もしてない、俺とショウの取り分を多くするのが当たり前だーって聞かなくてね。だけど、ギターのケンジは曲を作っていたし、ベースのユーゴは衣装を選んだり髪型を考えていた。こっちとしては、そのトータルバランスに惹かれてArtemisをメジャーに連れていくつもりだったから」


相沢さんは、そう言って苦笑いを浮かべた。


「こんな事言ったら、Artemisのファンに怒られちゃうだろうけど…。俺はね、最初から何万ってファンがついてるから彼等をメジャーに連れていきたかったわけじゃないんだよ」


そう言って相沢さんは、俺達全員の目を見つめてくる。


「何度も言うけど、売れるか売れないかは、売り方次第なんだよ。Artemisがメジャーにいったからってファンが全員ついてきてくれるとは限らないんだ。トーゴは、そこを勘違いしていると思った。ただ、歌っていた時はトーゴやショウの人気が凄まじいものだったかもしれない。でも、デビューすれば話しはかわってくる」


そう言って相沢さんは、顎に手を当てながら何かを考える仕草をして話す。


「milkだって、ボーカルが全く人気がなかったんだ。でも、今はボーカルのメイの人気がダントツだよ。ただ、歌っていた時とデビューしたら違う。何度もそうトーゴには、話したんだけどね。理解されなかった」


「Artemisは、どうなるんですか?」


まっつんの言葉に、相沢さんは悲しそうに目を伏せる。


「残念だけど、解散する。元々、トーゴの傲慢な態度を許せなかったってのもあるんだろうけどね…。トーゴとショウは、別事務所でデビューするらしい話も流れてきてる」


「そうなんですね」


「まあ、ケンジとユーゴはこっちに残ってくれてね!社長が、メンバーのオーディションをするらしくてね!メンバーが決まるまでは、milkとかのライブのスタッフとして連れていくみたいなんだよ」


「それは、どうしてですか?」


相沢さんは、頭を掻いて苦笑いを浮かべる。


「二人とも、バイトを辞めちゃったからね。迷惑かかると思ったみたいで!社長が力入れてたから、色々決めてたから余計ね。本当、残念だったよ」


「そんな凄いバンドの代わりが俺達でいいんですか?」


まっつんの言葉に、相沢さんはニコニコ笑ってくれていた。


「ごめん、ごめん。つい、愚痴ちゃった!いいも何も、SNOWROSEは素敵なバンドだよ!自信持って欲しい。何度も言ってるだろ?売り方次第だって」


相沢さんは、そう言ってニコニコ笑っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る