撮影の話【カクヨム版】

凛の眼差しの優しい所が好きだ。


「あのさー、一週間後に」


「うん」


「ジャケット撮影があるんだ」


「うん」


「俺は、凛ととりたいと思ってるんだ」


「えっ?」


「駄目かな?」


凛は、首を横に振った。


「よかったー。約束しただろ?凛を新しい場所に俺が連れていくって」


「うん」


「一緒に行こうな」


「うん」


凛の潤んだ眼差しが、俺を見つめてる。その目を見てるだけで、俺は幸せだった。凛の目の中に俺しか映ってない事が幸せだった。凛は、手探りでスマホを探してる。


「はい」


「ありがとう」


時間を見て固まっていた。


「帰る時間?」


「早いね!もう、23時過ぎてる」


「そうだな」


凛と過ごす時間は、いつもあっという間だった。


「帰る用意しなきゃ!」


起き上がった凛を後ろから抱き締める。


「拓夢」


「生まれ変わりなんて待てないからいうよ」


「うん」


「この先もずっと俺は凛を忘れないし、愛してる。だから、凛の傍にずっといさせて欲しい」


「それは…」


「親友になりたいって事」


俺の言葉に、凛は小さく「うん」と言った。


「着替えておいで!駅まで、送るよ」


「うん」


凛は、服を着替えに行く為にベッドを降りた。今日、俺達の関係は終わった。たった、数日なのにここまで心をもっていかれた事は初めてだった。

スマホを取って、見つめる。みんなよっぽど、アレが堪えたのか連絡は一切なかった。


本当にデビューすんのかな?不安しか感じなかった。


「出来たよ」


凛がやってきた。


「俺も用意するわ」


俺は、スマホを取って凛に渡した。


「ありがとう」


洗面所でさっきの服を着る。ポケットにスマホを入れる。


「行こうか」


「うん」


玄関に二人でやってくる。この扉を開けたら二度と凛と今みたいにはいられない。


「ごめん」


俺は、靴を履く凛を引き寄せる。


「んっ」


キスを夢中でする。


「ハァ」


凛の背中に手を入れながらキスをする。凛が震えるのを指先が感じる。これ以上すると止められなくなるから、やめた。


「ごめん、行こう」


俺の言葉に凛は首に手を回してキスをしてくる。凛は濃厚なキスをする。俺は、そのまま凛がしたいようにさせる。


「ごめんね」


「ううん」


「もうこれで終わりだって思ったら、我慢したくなかった」


「凛、俺もだよ」


凛は、バックからスマホを取り出して時間を見た。


「行かなきゃ」


「行こうか」


もう一度だけ、凛を引き寄せてキスをする。


「行こう」


「うん、送る」


俺と凛は、家を出る。玄関の鍵を締める。


もう、手を繋ぐ事もキスをする事も出来ない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る