触れ合う指先
歩きながら、駅に向かう。距離が近いせいで指先が当たる。本当は、握りしめたかった。
「どんな風なのかな?撮影って」
「そうだなー。綺麗にしてくれるよ!別人みたいに」
「凄いね!楽しみ」
凛の目が夜の闇の中でキラキラ光るのがわかる。あんなに、暗闇だった駅までの道が凛がいるだけでキラキラと輝いてるのが不思議だ。
「新しい
「うん」
指先がまた触れる。気にしないように歩かなくちゃいけない。
「拓夢の夢が叶ってよかったね!私も何かそこに乗っかってる。でも、凄く幸せ!何者でもないのに私まで、何かになれたみたい。染み付いた不幸が洗い流されていくみたい。羽根生えたみたいに
「本当に飛んでったら、駄目だけどな!でも、軽くなるならよかったよ」
「うん」
凛の笑顔が、キラキラしてる。愛してる、ずっと一緒にいて、俺と結婚してよ、旦那さん捨てて、そうやって、頭を流れてる言葉が、凛の笑顔見てると消えるのが不思議。凛を泣かせたくない。そう思うから、さっきみたいに剥き出しに言いたくない。身勝手な言葉で、もう凛を傷つけたくない。俺は、やっぱり大人の自分を捨てられない。
「また、メッセージくれる?時間と場所と日にち」
「勿論だよ」
「じゃあ、切符買うね」
あっという間に、駅についてしまった。凛と離れたくない。だけど、それは無理な願い。凛は、切符を買って戻ってきた。
「今日は、ありがとう!楽しかった」
「凛」
「何?」
こんな
「駄目だよ」
「これぐらいなら、友達とだってするだろ」
「拓夢、もっと続けたかったね」
小さな声で俺の耳元で、凛が呟いていた。泣いてるのがわかる。
「そうだな」
終わりがくるのなんて、最初からわかっていた。なのに、それを突きつけられたら離したくなくなる。所詮人間なんて、そんなもんだ。
「ごめんね。ワガママだってわかってる」
「俺だって同じだよ」
「私、こうなれた事、一ミリも後悔なんかしてないよ!だから、拓夢もしないで」
「しないよ」
「例え、どんな事を言われても…。私と出会わなかったって言わないでね」
そう言って、凛はしがみつくように俺を抱き締めてくる。
「言わない!絶対」
「よかった」
凛の腕が緩むのを感じて俺は凛から離れた。
「帰るね」
「うん」
「じゃあね、拓夢」
「気をつけて!ついたら、メッセージして」
「わかった!バイバイ」
「バイバイ」
凛は改札を抜けて、ホームに向かった。最終電車かな?改札付近に人は、ほとんどいない。俺は、暫くその場所から動けずにいた。
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