凛の最後の話

帰宅

私は、拓夢の家から出る。エレベーターに乗って一階に降りた。虹色の傘を広げて歩き出す。


パチパチと雨を傘が弾く。やっと、帰ってきた。今日から、また龍ちゃんがいる。だけど、頭の片隅に凛君としてしまったあの声が響いてる。離婚とかないよね。


駅について、傘を閉じる。いつものように、傘を丁寧に拭いた。改札を抜けて、ホームに降りると電車がちょうどやってきていた。私は、電車に乗り込んだ。見慣れた景色を見つめながら、電車は私の家がある駅に着いた。


拓夢が何とかしてくれると言ったのだから、忘れよう。私は、足早に家路を急いだ。家について、ポストを開けるけれど、勧誘チラシが数枚入ってるだけだった。私は、家の鍵を開けて中に入る。


龍ちゃんは、お昼を食べてくるだろうか?虹色の傘を拭きながら、そんな事を思っていた。


龍ちゃんが、帰ってくる前にシャワー浴びとかなきゃ!私は、傘を拭いてパタパタと家の中に入った。ダイニングテーブルの椅子に鞄を引っ掻けて洗面所に向かった。服を脱ぎ捨てて、洗濯機に入れてスイッチを回した。シャワーを捻る。お湯が出たのを確認してシャワーに入る。全てを洗い流すように、丁寧に洗う。洗い終わって、バスタオルをとった。頭をバスタオルで拭いて、体を拭いた。下着を履いて、ルームウェアに着替える。モコモコとした素材を着たのは、家の中だとエアコンで寒いからだ。私は、ドライヤーで髪を丁寧に乾かした。


リビングに戻るとエアコンのスイッチをいれてないのに気づいた。


ピッ…。まだ、昼間は暑いから緩めながらも冷房をつける。私は、鞄からスマホを取り出して拓夢にメッセージを送った。


凛君の動画を龍ちゃんがどうか見ませんように…


「ただいまー」


玄関から、声が聞こえて私は急いで玄関に向かった。


ガチャ…


「お帰りなさい」


「凛、いたの?」


龍ちゃんは、慌てて何かをポケットに突っ込んだ。


「今の何?」


「えっ!あっ、変な勧誘だよ!さっき、帰り道に」


そう言った顔はひきつっていて、嘘をついている気がする。


「何か見たの?」


私の問いかけに、龍ちゃんは首を左右に振って私の頭を撫でる。


「何もないよ」


その笑顔が、いつも通りで安心した。


「ごめん、洗濯物あるんだ」


龍ちゃんは、そう言ってキャリーバッグを指差した。


「私するから…。お風呂いれようか?」


「シャワーでいいよ」


「じゃあ、入って」


「うん」


「あっ!忘れてた。凛に、お土産」


「これ何?」


「餃子!美味しいらしいよ。冷蔵庫いれとく。後、たこ焼き味のお菓子」


私は、龍ちゃんを見て泣いていた。


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