出れば?

「拓夢、電話出れば?」


「うん」


俺は、そう言われて電話に出る。


「もしもし」


『拓夢!今日、何してる?』


「今は、まっつんといるけど」


電話の相手は、かねやんだった。


『あのさ、松永先輩って人が今日ならこっちに来てるらしいんだ!拓夢が、大丈夫なら会わないか?』


「わかった!行くよ」


『いや、俺が今迎えに行ってるから!まっつんと何処にいるの?』


「いつもの場所だけど」


『なら、そこに連れてくわ!じゃあな!』


プー、プー。


そう言って、電話が切れた。


「誰?」


「かねやん」


「何か用事だった?」


「松永先輩って話しただろ?美紗の…」


「うん」


「あの人と来るって」


「話聞くのか?」


「うん」


「じゃあ、かねやん来たら俺は帰るわ!」


「別に居ていいよ」


俺は、そう言って珈琲を飲んだ。


「美紗ちゃんの事、知るの怖くないか?」


「怖い気持ちはある。でも、知らなきゃいけないだろ?離れてる間の美紗の事」


まっつんは、「そうだな」って呟いて珈琲を飲んだ。俺とまっつんは、それ以上話さなかった。お互いにスマホを見ていた…。


コンコンー


沈黙を破るようにノックの音が響いた。


「はい」


ガチャっと扉が開いて、かねやんとまだらに白髪のある男性が現れた。


「遅くなって、ごめんな」


そう言って、二人は入ってきた。


「全然」


かねやん達が入ってきてすぐに店員さんがやってきた。珈琲を4つ置いていなくなった。


「二人のも頼んだんだ」


かねやんは、そう言って男性に「こっちに座って下さい」と言っている。


「ありがとう」


俺とまっつんは、珈琲を取った。


「こっちが松永さんで、こっちが松田と星村です」


『初めまして』


俺とまっつんは、お辞儀をする。


「初めまして」


松永さんも、お辞儀をした。


「あの…」


「智から、頼まれてるから…。話していいのかな?」


かねやんの声に松永さんは、そう言って笑った。智の職場の人に何て初めて会った。


「お願いします」


俺は、頭を下げる。松永さんは、美紗との始まりから丁寧に話してくれた。そして、最後にこう言った。


「美紗はね、そいつの人生をとことん不幸にしなくちゃ気が済まない女だった」


「そいつって?」


松永さんは、珈琲を一口飲んで心を落ち着かせてる。


「俺の婚約者、自殺したんだ」


「えっ」


俺達は、全員固まった。


「心配しなくても、生きてるよ!だけど、彼女の両親には二度と会わせないって言われた。それに、三日間目が覚めなかったから…」


松永さんの目から、ポトリと涙の雫が流れるのを見つめていた。


「美紗が、追い詰めたんですよね?」


松永さんは、俺の言葉に頷いた。

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