帰り道…【カクヨム版】

拓夢は、黙って私の手を引いてる。


「忘れ物はなかった?」


「うん、大丈夫」


「なら、いい」


そう言って、また黙って手を引いてく。ホテルのロビーにやってきて、料金を清算している。


「帰ろう」


「うん」


また、黙って手を引かれてく。


「平田さんと寝たのか?」


ホテルから出た瞬間に、拓夢にそう言われた。


「してない」


「嘘つかないでいい」


「本当にしてない」


「俺には、嘘つかないで」


その言葉に、私は「最後まではしてない」と言ってしまった。


「よかったー」


拓夢は、ホッとしたような笑顔を私に向ける。


「よかったって、何?」


「最後までしたかった?」


「話そらさないでよ」


「ずっと、ヤバイんじゃない?」


「だから、拓夢」


「凛が知らなくていい事だよ」


そう言って、拓夢はタクシーを停める。一緒に乗り込んで、流れる景色を見ながら、拓夢の家にやってきた。


「拓夢」


「まだ、大丈夫?」


「うん」


スマホを見るけど、龍ちゃんが帰宅するって連絡はなかった。


ガチャと鍵を開ける。


「凛」


拓夢は、我慢の限界がきたのか私を抱き締めてくる。


「さっきの話何?」


「凛が、やってる声が流れただけ」


「どこから?」


「平田さんの母親のスマホから…」


拓夢は、そう言うと私の手を引っ張っていく。ベッドに座らされる。


「したかったんじゃない?最後まで」


「待って、私、動画撮った」


「平田さんと」


「だけど、凛君、友達に送るって」


「友達?何の為に」


「脅されてたの…。だから、キスの動画とやってる声を送ってこいって」


「協力したのか?」


「うん、でも、何で凛君の母親が?」


「平田さんが、母親に送ったのか?送った所は見た?見せてもらった?」


私は、首を横に振った。


「どうしよう?」


龍ちゃんに知られたくない、バレたくない。体が震えてくる。


「リベンジポルノって言われてるやつか?俺が、平田さんに話聞いて消させるから心配しなくていい。最後までしてないんだろ?」


「胸だって見られたし。触り合いしたし。キスもしたし。どうしよう、どうしよう。拓夢、私、私…」


「旦那さんにバレたくないんだろ」


涙を流して震える私を拓夢は抱き締めてくれる。

今になって、何て馬鹿な事をしてしまったのだろうと思っている。


「大丈夫、俺がちゃんと話してくるから…」


「ごめんね、巻き込んで!ごめんね」


「いいんだよ!凛は、何も悪くない」


そう言って、抱き締めてくれる。


「しようか?嫌じゃないなら」


「うん」


「旦那さんに会う前に、ここ真っ白にしなくちゃ!」


そう言って、頭を優しく撫でられる。


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