ここに、座って…

凛君は、私の涙を拭い続けてくれていた。


「ありがとう」


「僕、凛さんの旦那さんなら幸せだっただろうな…」


「そんなわけないよ」


「どうして?」


「赤ちゃん出来ないから…」


「僕は、その方が嬉しいんだけどね」


初めて、そんな言葉を言われて私は驚いていた。子供が産めなくて嬉しいと喜んでくれる人間がいる事に…。凛君は、ポテトチップスをパーティー開けしていた。


「その顔は!鳩が豆鉄砲食らった顔ってやつじゃない!」


私の顔を見つめて、凛君は笑ってる。そして「いただきます」と言ってポテトチップスを食べ始めた。


「赤ちゃんが産めないのを、嬉しいなんて言って最低だよね。ごめんね」


「違う」


私は、首を横に振った。


「それなら、いいんだけど…」


「普通は、出来ないと言われたら怒るか悲しむと思うの…。なのに、凛君は嬉しいって喜んでくれるなんて…。そんな事あるんだなって思った」


「よくわからないけど?」


「自分の子孫を残せないんだよ?私は、ポンコツだから…」


凛君は、私の言葉に怒ったのがわかった。ティッシュで、手を拭いて痛いぐらいに手を強く握りしめられる。


「凛君、痛いよ」


「何で、そんな言い方すんの!!」


ボロボロ泣きながら、私を睨み付ける。


「痛い」


「じゃあ、訂正して」


「本当の事なの」


「違う、訂正して」


「凛君には、わからないよ」


「わからないけど!凛さんが、自分をポンコツだなんて言うのは許さない」


「凛君に、許してもらう必要ない!だから、離して」


「凛さんは、ポンコツ何かじゃない!証明してあげる」


「証明?」


そう言って、凛君は私の手を離してくれた。証明って、一体何?


「凛さん、ここに座って」


「そこは、違うでしょ?」


「いいから、座って」


「どうして?」


「証明してあげるって言ったでしょ?」


「何の証明?」


「凛さんの体が、ポンコツじゃないって証明」


「そんなの出来ない」


「出来るよ!きて」


そう言って、手を引っ張られる。そこに座るのは、何か違う気がする。だけど、凛君は私に座れって自分の太ももを叩いてる。


「どうやって、座るの?」


わかってるくせに、わざと聞いてみた。


「僕の方に顔を向けて座って!ほら…」


「どこで、こんなの習うの?」


「ドラマや漫画でだってやってるよ!」


私は、言われた通りに凛君の上に座った。


「腰浮かせてたら、わからないでしょ?」


そう言って、凛君は私の腰を軽く押さえつける。


「恥ずかしいよ!凛君」


こんなの恥ずかしい。龍ちゃんとこれをする時は、流れでそうなる時で…。しない状態で、この抱き合い方はしないからよけいに恥ずかしい。

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