凛君と過ごす

「凛さん」


私は、凛君に引き寄せられて抱き締められる。


「今日一日だけ、彼女になってよ」


「それは…」


「凛さんと最後まではしないから、お願い」


凛君のすがるような声に嫌だとは言えなかった。


「わかった」


「じゃあ、お酒飲んでいいよ」


凛君は、そう言って私から離れてニコニコ笑う。凛君みたいな子供がいたら、私は凄く幸せだったと思う。


「わかった」


「じゃあ、取るよ」


凛君は、そう言ってレモンチューハイを持ってきてくれる。


「はい」


「ありがとう」


ソファーに並んで座る。


「僕は、サイダー飲むよ」


凛君は、プシュとペットボトルを開けて紙コップに注ぐ。私にも紙コップをくれる。


「乾杯」


「乾杯」


そう言って、私はお酒をゴクゴクと飲む。何を話せばいいのかわからない私に、凛君が話しだす。


「凛さんは、犬派?猫派?」


「猫派かなー」


「へー!僕もどっちかって言うとそうかな!あのへそ天してる仕草が好きだなー。可愛くて」


「確かに、可愛いよね」


えっ……。笑いながら、凛君を見つめた瞬間。キスをされていた。


「ごめんね」


「それは…」


「凛さんも、猫みたいに可愛かったから」


「そういう問題ではないよね」


「キスぐらいは、させてよ。それ以上は、望まないから」


一度、凛君のキスを受け入れた身として、突っぱねる事が出来なかった。弱みを握られてる感じがした。


「わかった」


私は、そう言うしか出来なかった。


「よかった!ありがとう、凛さん」


そう言って、またキスをされる。厭らしいキスじゃない所が、凛君らしい。フレンチキス。軽く挨拶のようなキス。


「じゃあ、次ね!食べ物は、何が好き?」


「何だろう!何でも好きだけど、好んで食べるのはカボチャかなー」


「カボチャ!煮物とか?」


「サラダが好き!マヨネーズを少しだけ入れるの!ブラックペッパーをミルで粗めに出したやつをかけてね」


「凛さん、本当に好きなんだねー。可愛い」


そう言って、頭を撫でられる。凛君は、ニコニコ笑ってて。ほとんど話しなんて聞いてない気がした。


「聞いてた?」


「ちゃんと聞いてたよ!あっ!ポテトチップス買ってなかったっけ?食べよう」


凛君は、そう言ってコンビニの袋からポテトチップスを取り出した。私、凛君と一緒の歳だった時、蓮見君とこんな風にしたかったんだよね…。凛君は、うしなった何かを思い出させてくれる子。


「パーティー開けってのにしていい?」


「うん」


「泣かないで」


凛君は、私の涙を拭ってくれる。


「ごめんね」


「嫌な事、思い出した?」


「ううん、違う」


むしろ逆だよ!愛を真っ直ぐに信じていたあの頃を思い出してた。今みたいに打算的じゃなくて、何も考えずに、ただ好きな気持ちだけで突っ走れたあの頃を思い出してた。

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