じゃあ、また

「駅まで行くね」


「はい、お願いします」


しゅんさんは、車を出してくれて拓夢の家の近くの駅に連れてきてくれた。


「じゃあね、凛さん」


「はい、さようなら!気をつけて帰って下さいね」


「今から、仕事だよー」


「あっ!私のせいで、ごめんなさい」


「いやいや、凛さんのせいじゃないよ!九時半からだから、気にしないで!じゃあね」


「はい、さよなら」


私は、しゅんさんに手を振った。拓夢との事は、もうどうにもならないんだよね。駅で切符を買って、改札を抜けてホームについた。


ブー、ブー。


私は、スマホを見つめる。


【今日も会えますか?】


【いいよ】


【じゃあ、また後で!あっ、晩御飯は四人で食べましょう】


【はい】


凛君からのメッセージに返事を返した。私は、拓夢の連絡先を見つめていた。もう、終わりなんだよね。私と拓夢は、もう噛み合っていない気がする。もう、別の場所に進んで行ってる気がする。

違う?拓夢。

もし、違うなら何で連絡くれないの…。

私は、やってきた電車に乗り込んだ。最寄りの駅でついて降りて歩き出す。改札を抜けて、虹色の傘だけを返して欲しかった。


「あら、おはようございます」


「あっ、おはようございます」


まさか、坂東さんに会ってしまった。


「朝から、どこかに?」


「いえ、友達がちょっと体調崩しちゃって、様子を見に…」


「へー。友達…」


「はい」


苦笑いにならないように気をつけて笑う。


「皆月さん、大変ね!まだ、若いでしょ?友達も」


「あー、そうですね」


「若い頃って色々あるから大変よねー。まぁ、皆月さんが不倫なんかしていなくなっちゃったら私寂しいわー」


いやいや、さっきから釘を打ち付けてくる。


「それは…」


「皆月さんに限ってないわよねー。じゃあ、またね」


坂東さんは、ニコニコ笑っていなくなってしまった。


「ハァー」


疲れた。凄く、凄く、疲れた。私は、ポストを開ける。子供向けの勧誘チラシがたくさん入ってる。鍵を開けて、そのチラシをぐちゃぐちゃに丸める。リビングに行って、ゴミ箱に捨てた。


「嫌がらせ」


そんな言葉を言って捨てる。


若い時は、こんなチラシにイライラも悲しくもならなかった。何の感情も揺さぶられなかった。「もう、ゴミになるしー」ぐらいの感覚だった。それが、今はこんなチラシ一つで私は人生を呪い。消えたくなる。絶望で染まってく。ダイニングの椅子に座って、頭を机に置いた。

スマホを開いて、あの掲示板を覗く。


【仲間だと思ったのに、妊娠したとたんに、私はこれでとかって言ってきた】悲しい文章。


【もう、年齢的に無理なのわかってるのに諦めたくない。どうしよう】わかるよ。凄くわかる。


【最後のチャンスも駄目でした】彼女は、どんな未来を歩いて行くんだろうか?


私は、掲示板を閉じる。

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