行かないで…
「いやー、いやだー、行かないでよー、あー、あー」
私は、誰の事も気にせずに膝から崩れ落ちてワンワンと子供みたいに泣いていた。凛君が、すぐに近づいてきた。
「凛さん、ごめんね!僕のせいで」
私は、その言葉にすぐに冷静さを取り戻そうとした。だって、凛君が帰れなくなったのは私のせいだから…。
「ううん、凛君が悪いわけじゃないの。私が、悪いから」
そう言って私は、ふらふらと立ち上がった。虹色の傘を杖みたいに使ってゆっくりと歩き出す。
「行こう!迷惑だから!違う場所に…」
もう、どうでもよくなった。
「追いかけて!凛さん!僕の事は気にしないで」
「無理だよ」
「無理じゃない!早く、大好きなんでしょ?だったら行って」
「無理って言ってるじゃない」
私は、怒りを凛君にぶつける形で言ってしまった。
「ごめん……ね」
「いや…」
私と凛君の会話を聞いていたまっつんさんが、近づいてきた。
「凛さん、拓夢の家知ってるんだろ?」
「うん」
「だったら、行きなよ」
「無理です」
「無理じゃない!」
「許してくれない!私を嫌いになったんだよ」
理沙ちゃんが、私の肩を掴んだ。
「そんなわけない!たくむんは、凛ちゃんが好きだよ!この子は、見といてあげるから行きなよ!」
「そうだよ!拓夢は、そんなに簡単に好きな人を変えたりなんかしないから」
「凛さん、誤解ときに行かなきゃ!」
「でも…」
「もし、駄目だったら連絡して!優太の家で三人で待ってるから」
私は、理沙ちゃんに背中を押された。
「わかった!お願いね」
「うん」
私は、三人に頭を下げて走り出す。拓夢に会って話がしたい。ちゃんと、誤解を解かなくちゃいけない。駅前で、タクシーに乗り込んで拓夢の家に向かった。拓夢の家の前で降りる。エレベーターに乗り込むとドッドッって苦しくなる程に胸が痛みだした。
ほら、さっきも言ったよね!人間はには、第六感があるらしいって!嫌な予感がする。だけど、拓夢に会いたかった。拓夢の話をしたかった。だから、私は嫌な予感を感じないように拓夢の家に行った。玄関の前で、インターホンを押そうとする手が震える。
どうしよう…。押せない。
急に、怖じ気づく自分に気づいた。
「もう、何でよ」
中から、女の人の声が聞こえてきた。こんなに薄いの?あー、違う。ポスト壊されてるからか!
きっと、玄関の近くで話してるのかも…。
「待ってって、美紗」
その言葉に、涙がボロボロと頬を伝ってる。
「何で?何で?出来ないのよ」
「待てって!すぐ、なるから!大丈夫だから」
私は、傘を床に落とした。二人が、何を今から始めようとしているのか…。いや、今までしていた事をわかってた。
のに…。
何で?
何で?
馬鹿だね…。
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