いるなら、言えよ

スマホの画面を見ると、【まっつん】からだった。


「もしもし」


『もしもし、拓夢』


「どうした?」


『拓夢、いるなら言えよ!一緒に合流したらよかったじゃん』


「えっ?何の話し?」


『……駅の…』


「駅にはいるけど?」


『はぁ?凛さんといるんだろ?理沙がトイレで凛さんに会ったって』


「トイレって何?」


『駅前のミゼリアだよ』


「ミゼリアってファミレスの?」


『あっ、悪い!勘違いだったわ!また、かけるわ』


「まっつん」


プー、プー、プー


ファミレスのミゼリアに凛と俺がいるって何?

凛は、帰ったよな?

22時45分に凛からのメッセージが届いていた。


【無事につきました。今日は、楽しかった。また、連絡するね!拓夢もゆっくり休んでね】


スマホを開いて確認するけど、間違いなく凛からのメッセージだった。俺は、気になって走り出す。駅前のミゼリアに到着した。俺は、ゆっくりと歩いてく。


まっつんが、いるって言ってたよな?


「早く、いいから」


目の前に現れたのは、凛だった。


「何で?」


俺を見て驚いた顔をしてる。それは、こっちの台詞だった。隣にいる人を見つめると…。急に怒りやら悲しみやらが沸き上がってきた。


「俺とは、過ごせないのに…。平田さんとは、過ごせんのか?」


「拓夢、違う」


「違うって何?」


イライラが止められない。


「拓夢、これには訳があってね」


「訳って何?」


「それはね…」


凛がそう言った時、まっつんと理沙ちゃんが、やってきた。


「拓夢、ごめん。俺、知らなくて」


「別にいいよ!むしろ、感謝だわ!こんな女を好きになって馬鹿だったわ」


「拓夢、違うの」


「何が違うの?所詮、凛にとって俺はただのセフレだろ?あー、好きになって損したわ」


「拓夢」


「悪いけど、帰るわ!お別れしにきただけだから」


「拓夢、待って」


「じゃあね、お幸せに」


「拓夢、待てよ」


俺は、誰の言葉にも振り返らずに走った。


「はぁ、はぁ、はぁ!ダセェ!嫉妬してんじゃねーぞ!みっともない」


ブー、ブー、ブー


俺は、スマホを見つめる。


「はい」


「……。でね!だけど、もう、許さないでしょ?」


「会おうか?今から」


「いいの?」


「家来ててよ!帰るから」


「わかった」


人間なんていい加減な生き物だ!二度と触れたくない、関わりたくない。そう思っていたって…。心に傷がつくと、それを埋める為の何かを求めてしまう。それが、間違っていたとしても…。


例え、目の前に毒を盛った皿を差し出されたとしても…餓死寸前だったら俺はきっと食べるんだ。


ブー、ブー、ブー


俺は、スマホを見つめて電源を落とした。駅前で、タクシーに乗って家に帰る。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る