連絡

服を着替えて、キッチンに向かった。俺は、グラスに水を注いで飲む。


「凛、可愛かったなー」


ニヤニヤと思い出し笑いが止まらない。


「本当、めちゃくちゃ可愛かったなー」


ブー、ブー、ブー


スマホが鳴ってる。俺は、鞄から画面を見ずに取り出した。


「もしもし、凛?」


『相当好きだなー』


「なんだよ!かねやんかよ」


俺は、心底がっかりした声を出した。


『そんなあからさまにガッカリされると思わなかったんだけど…』


「あー、ごめん」


俺は、頭を掻いた。


『何かあった?』


「いや、別に」


『水くさいなー!言えよ』


「今日も一緒に居たいって言ったら、困っちゃったんだよな!それが、ずっと引っ掛かってる」


『それは、人妻好きになってんだから駄目に決まってんだろ!あのなー!拓夢。不倫ってのは、ルールがあるんだよ』


そう言って、かねやんはやれやれって感じで話し出した。


『相手に迷惑かけない!これは、鉄則だぞ!家庭壊しちゃいけないし、相手が必要な時しか一緒にいれないんだよ!わかるか?』


「かねやん。何か、経験者みうな口ぶりだな」


俺の言葉にかねやんは、言いにくそうにしながら話し出す。


『実はさ!三年前に付き合ってる人いるって言ってただろう?』


「うん」


『その人、人妻になったんだ!』 


「なったって、何?」


『最初は、違うかったんだけど…。いつまでも、俺が結婚って言ってこないから、一年前にしたんだよ』


「それで?」


『それからも、関係続けてたんだ』


かねやんは、バツが悪そうな言い方をしていた。


「そうだったんだな!まあ、今の俺にかねやんを責める権利はないわ」


『わかってて言ったのかもな!ごめん』


「別にいいって」


『だけど、メジャーの話が出たから、ちゃんと別れたよ!でもな、拓夢』


「うん」


『ルール守れないやつは、不倫しちゃ駄目だ』


かねやんの言葉は、俺の胸に刺さった。


『相手に迷惑かけちゃ駄目だし、わがままなんか言えない。相手の幸せを考えて、連絡だって控えなきゃいけない。相手から、会いたいって言ってくれたり会いに来てくれなきゃ会えない。妊娠させるのも駄目!外でも会えないし、手だって本当は繋げないんだぞ。旦那さんの文句だって一緒に言っちゃ駄目だ!兎に角、不倫ってのは普通の恋愛と違って厄介なんだ!それでも、拓夢は、凛さんを愛してるんだろう?』


かねやんの言葉に俺は頷いていた。


『進むのは、茨の道だ!覚悟が出来ないなら、別れた方がいい』


「わかってても、俺は凛といたい」


『だったら、覚悟決めるしかないだろ?』


かねやんの言葉に、俺は泣いていた。

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