どうしろって?

「美沙、俺にどうしろって言うんだよ」


「責任とって、結婚して」


「それは…」


「そんなに、あの女が大事なの?」


俺は、答えられなくて俯いた。


「美沙の方が、拓夢を愛してるよ」


「あんな怖い思いさせたくせにか?愛してる人間がする事か?」


「拓夢」


「ごめん。でも、考えさせて欲しい」


美沙は、俺の言葉にポロポロ泣き出した。


「ごめん」


美沙と話しながら、手が震え始める。


「いつ?」


「何が?」


「いつ、答えでる?」


「わからない」


「三日以内に出さないなら、あの女の旦那に言うから!」


「彼女は、関係ない」


「関係あるよ」


「どうしてだよ」


「あの女がいるから、拓夢が私を選べないんでしょ?」


美沙の不適な笑みに、手の震えが止まられなくて俺はギュッと握りしめた。


「彼女がいなくても、俺は美沙を選ばない」


「どうして?」


俺は、下唇を噛んで黙り込んだ。


「どうしてよー」


美沙は、ヒステリックに俺を怒鳴り付けて睨んだ。


「俺……」


最初に話すのは、凛にしようと決めてた。


「何?」


「俺……」


だから、話したくない気持ちが勝ってる。


「だから、何って言ってるの」


俺は、ゆっくりと鼻から息を吸い込んだ。そして、吐き出すタイミングで美沙に告げる。


「メジャーの話を受けようと思ってるんだ」


美沙は、俺の言葉に目をパチパチさせながら驚いた顔をする。


「解散するつもりだった。でも、挑戦しようって話し合って決めたんだ。だから、俺は美沙を選ばない」


「勝手な事言わないでよ」


「ごめんなさい」


俺は、美沙に深々と頭を下げる。


「ふざけんな!ふざけんな」


美沙は、俺の胸ぐらを引っ張ってくる。


「ごめんなさい」


「絶対に許さないから!」


「うん」


「拓夢の人生、台無しにしてやるから」


「わかった」


美沙が俺を傷つけたいって言うなら、受け入れるよ。


「何で?バンドがメジャーにいっても意味ないんだよ!美沙、週刊誌に言うよ!拓夢に赤ちゃんおろすように言われたって」


「いいよ、そうしたいなら」


「拓夢、何でそんなに余裕あるのよ」


「余裕なんてないよ!ただ、一度は諦めた夢だから…。向き合うなら、ちゃんとしたいだけだよ」


美沙は、俺から手を離して睨み付ける。


「許さないから、絶対に」


「わかってる」


「それなら、覚悟してて」


「わかった」


俺の揺るぎない気持ちに気づいて美沙は、立ち上がった。


「やっぱり、拓夢ってつまらない人間だね」


美沙は、鼻で笑った。


「美沙、ごめんな」


「どうでもいいわ」


美沙は、そう言って俺を睨み付けて去っていった。美沙が小さくなった瞬間だった、体が、小刻みに震えだした。


「ダセェ、俺」


震えがどんどん強くなってく。


「弱い人間だな」


俺は、その場にしゃがみこんだ。


「助けてよ、凛」


無理な願いを口に出して、震えながら泣いていた。

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