打ち合わせ

出社して、見積もりを持ってパンケーキの店に溝口と行く。


「あー、課長の話のせいで12時前ですよ」


「そうだな」


「昼には、直帰出来ると思ったのになー」


「そうだな」


そう言いながら、溝口は運転していた。凛が、平田さんに会うまで一時間もないか…。


「ついたら、見積もり渡して休憩しましょう!」


「そうだな」


パンケーキの店についたのは、12時半を回っていた。俺と溝口は、車を降りた。


「遅くなりました」


「いえ」


俺と溝口は、店長さんに部屋に通される。


「カウンターの業者なんですが!溝口、資料」


「あっ!車に忘れました」


「えっ?」


「とってきます」


「すみません」


「いえ」


俺は、店長さんに頭を下げた。店員さんが、珈琲を持ってきてくれる。


「すみません」


溝口が戻ってきた!


「これです」


「ありがとう」


俺は、店長さんに資料を渡した。


「先輩」


「何だよ」


「さっき、ヤバかったっすよ!おばさんが、女の人に怒ってました!修羅場だなー、あれ」


「おばさん?女の人?」


「はい!綺麗な色のワンピース来てたな」


「どんな色?」


「何だっけ!天色?空色っていうのかな?鮮やかな青色のワンピースだったけど。何て色だっけ」


「ごめん。溝口、俺ちょっと行くわ」


「えっ?何で?」


「ごめん」


嫌な予感がした俺は、店長さんに頭を下げて部屋を出る。きっと、凛の気がした。俺は、早歩きで店の外に出た。


「あんた、いい加減にして」


「離して下さい」


「ふざけないでよ」


おばさんが、凛の腕を掴んでいた。


「何してんだよ」


俺は、凛の方に走って行った。


「拓夢!!」


「あんた、旦那ならこのくそ女、見張っときなよ」


「誰だよ!あなたに、凛を酷く言われる筋合いはない」


「拓夢、いいの」


「嫁の管理ぐらいちゃんとしとけって言ってんのがわかんないわけ」


「だから、そんな言い方される意味がわからないって話してるんです」


「いいから、拓夢。大丈夫だから」


そう言って、凛は俺の腕を掴んでる。


「こんな若い旦那がいながら、何してんのよ」


バチン……


「拓夢、大丈夫?」


俺は、凛を庇って頬にビンタを食らった。


「大丈夫、大丈夫」


「何でよ!何で、あんたが庇うのよ」


女の人は、泣きながらそう言ってる。この人が、誰なのか何となく見当がついていた。


「母さん」


やっぱりだ!俺は、その声の方を見つめていた。


「何で来るのよ!待ち合わせ場所は、ここじゃないでしょ」


「何で、酷い事するんだよ」


「この女が、あんたをたぶらかしたんでしょ?だから、お母さんが来たのよ」


「違うよ、違う。凛さんは、僕の気持ちに答えられないって言いに来たんだよ」


「何言ってんのよ」


「凛君、それ以上言っちゃ駄目だよ」


「気安く呼ぶなー」


平田さんの母親は、凛をまた殴りつけようとする。


「やめろよ、母さん」


平田さんが、その手を押さえつける。

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