カラオケ

「どうしたの?」


「嫌、若いなって」


「若い?皆月さんは?いくつ?」


「女性から聞く?」


「あー、ごめん。俺は、27歳」


「わっか!私、一回り違う」


「39歳って事?」


「そうだね」


「見えないよ!全然」


「本気で言ってる?」


「本気で言ってるけど」


「それは、ないよ」


私は、オレンジジュースを飲んだ。


「そうかな?充分、若いと思うけど!年齢なんて対した意味ないでしょ?」


「でもね、私が小学校卒業する時に星村さんは産まれたんだよ!犯罪レベルよ」


「いやいや、もっと離れてる人もいるから!犯罪レベルは言いすぎだよ」


「そうかな?」


「そうだよ」


何だろう、星村さんといると頭の中が空っぽになる。脳ミソの要領を占めている大問題をなかった事に出来て…。学生の頃に戻れるみたいな感覚になる。


「また、泣いてるよ」


また、ハンカチを差し出された。


「あっ!ごめん。何か歌って欲しいなぁー」


「何でもいいの?」


「うん、何でも」


そう言って、彼は曲を入れた。


「考えてもキリがない問答に押し潰されてしまう♪答えなんて出るはずないのに時間を磨り潰していく♪消費してく体と磨耗する心で、捻り出す言葉なんてたかが知れてる♪」


初めて聞く歌だけど、拓夢の優しい声にピッタリだった。気づけば、涙が頬を伝い続けていた。


「大丈夫?」


「ごめんね、何か…」


私が泣いてるのを見つめて拓夢は話してくる。


「あのさ、俺ね!もう、バンド解散って話しになってるんだ」


「えっ?」


「ベースの智がさ!出来ちゃった婚するらしくて!俺達、中学からバンド組んで5人でやってきたんだ!だから、智が抜けたらやりたくなくてさ!せっかく、メジャーな人をプロデュースしてる人が見に来てくれて声もかけられたんだよ!もう一回聞かせて欲しいって頼まれてたのに…。昨日智が、無理だって言ってきた。だから、断る事になったんだ。5人じゃなきゃ意味ないから…」


「そうなんだね」


うまく言葉を選べなかった。手にしたい未来と違うのは拓夢も同じなのがわかった。


「って、何か皆月さんには話せる気がして言っちゃった!ごめんね」


「ううん、うまく言えなくてごめんね」


「うまく言って欲しいわけじゃないから…。黙って聞いてくれるだけで、充分だから」


失くしたものと望んだ未来、その違いに苦しんでいる私と拓夢が…。お互いに興味を持つのは、自然な事だったんだと思う。


「素敵な歌声だから、きっとデビュー出来たよ!星村さん、歌うの続けた方がいいですよ!バンドじゃなきゃ駄目なら、難しいけど…」


「皆月さん、泣かないでよ」


そう言って拓夢は、私の隣に座った。

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