いってきます

結局、あの後ずっと泣いていて気づいたら寝ていた。朝目覚めると目が腫れていた。私は、いつも通り起きて朝御飯を作った。


「おはよう」


「おはよう」


謝れていないけれど、普通にしといた。でも、どことなくギスギスしている。


朝御飯を無言で食べ終わると、龍ちゃんは仕事の支度をした。


「行ってきます」


「お弁当」


「ありがとう」


「行ってらっしゃい」


「うん」


ギスギスしたまま、龍ちゃんは仕事に行ってしまった。

私は、お皿を洗いながら溜め息を繰り返していた。


「はぁー。何でかなー」


たった一言【ごめんね】が言えなかった。


駄目だ、やっぱり。


洗濯を干して、掃除機をかけて、モップをかける。


それが、終わった頃にショートメッセージがやってきた。


【星村です。昨日の駅で11時に待ってます】


そうだった!昼御飯の約束してたんだ。


【わかりました】


私は、メッセージを送信した。


私は、拓夢に会う為に用意をした。この頃は、何の興味もなかった。


「よし、これでいっか」


家を出て、待ち合わせ場所に向かった。待ち合わせ場所についたのは、10時半過ぎだった。


「早いですね」


「あっ、こんにちは」


拓夢は、早くついていた。


「お店なんですが…」


「あっ、ハンカチ。今日洗ったばっかりで…」


「いつでも大丈夫」


「すみません」


「気にしないでいいから、あっ!ここです!」


そう言われてやってきたのは、一件の洋食屋さんだった。


「何か建物見ただけで美味しそうなのが伝わってきますね」


「そう?」


「はい」


その店では、ビーフシチューが有名だと教えられて注文をした。食べ物の話を散々して食事が終わる。


「ご馳走さまでした」


「いえいえ」


「あの、珈琲ご馳走します」


「そんなのいいですよ!あっ!星村さんはお仕事は?今日は?」


「休みです」


「それなら、よかったです。何の仕事してるんですか?」


「バンドのボーカルと会社員やってます」


「ボーカルって事は!歌、お上手なんですね」


「上手かどうかは…」


「あの、聞きたいって言ったら怒りますか?」


「いえ、大丈夫」


「じゃあ、駅前のカラオケ行きましょう」


「はい」


昨日の喧嘩を引きずっていたせいで、スッキリしたかったけど…。遊べる友達が、雪乃しかいなくなってしまった今…。どうする事も出来なかった。


カラオケにやってきて、私と拓夢は中に入った。


「珈琲、ここのになりましたね」


「私は、珈琲じゃないですけどね」


店員さんが、飲み物を持ってきてくれた。


私と拓夢は、どう見られているのだろうか?


姉弟とかかな?


嫌、親子か?


年下である事は、想像がついていた。

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