無理しないでいいから【カクヨム版】

「もうちょっとしたら、起き上がる」


「龍ちゃん」


「なに?」


「もう、無理して私を抱かなくていいんだよ」


何言ってるのかな、私。


「無理なんかしてないよ」


「それなら、いいんだけど…」


「どうした?凛」


「何でもないよ」


セックスは、別の人とすればいいんじゃない?何て、酷い言葉が浮かんできた事を言えない。


浮気なんかさせない、許せないって言える人に私の気持ちは、きっと理解できない。


私も、13年前まではそう思っていたから…。


だけどね、13年妊娠しないとね。こうなるんだよ!


分け与えられても、無駄遣いで終わって、子孫繁栄も出来ないポンコツな体を抱えて…。それでも、龍ちゃんの子供が欲しいと望んでしまうから…。龍ちゃんとのセックスは、私にとって苦痛だ。


それなら、ただ快楽を与えられるだけのセックスがしたい。沼の中に沈んでいくようなセックスがしたい。何も考えないでいい行為がしたい。


「もう、何も考えなくていいんだよ!凛」


ギュッーって抱き締められて泣いた。龍ちゃんとのキスは好き!抱き締められるのも好き!でも、妊娠に繋がる行為は全て嫌いだ。

龍ちゃんとの、セックスは嫌いだ。


「凛?」


「チューしよう」


「うん」


軽く唇を合わせて、優しくキスをする。


「可愛いね、凛」


そう言われてニコって笑った。


誰にもわかってもらえない。こんな変な気持ち。


龍ちゃんをこんなに愛してるのに、龍ちゃんとのセックスが嫌いなんて言えない。頭の中にこびりついた、セックス=妊娠を消せない。消せれば、好きになれるのに…。


「泣かないで、凛」


「ごめんね。ポンコツでごめんね」


「凛は、ポンコツ何かじゃないよ」


「ごめんね、龍ちゃんの赤ちゃん産めなくて」


「凛……。気にしないでいいから」


「龍ちゃんのお母さんは、孫を見たいって言ってたよ」


「そんなの昔の話だろ?」


「それでも、本音だよ」


「凛、別れたいってまた言うつもり?」


「別の人なら、龍ちゃんの子孫残してくれるかも知れないでしょ?」


「だから、いらないって前にも話したよね?」


わざと怒らしてる。


「嘘だよ!龍ちゃん。子供育てたいって言ってたじゃん」


「そんなの、5年以上前の話だろ?何で、今頃蒸し返すんだよ」


「だってもう、私といる以上選択肢ないじゃん!赤ちゃんは望めないんだよ」


「だから、俺は赤ちゃんが欲しくて凛と一緒になったわけじゃないから!凛だから、一緒になったって話したよね」


「でも、私じゃなかったら

龍ちゃんの赤ちゃん産んでくれるから」


「もういい!おりて」


龍ちゃんの上に座っていた私を、龍ちゃんはおろした。




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