なろう100000PV☆不純異性行為～月と星が交わる場所へ～あの時の二人を救ってくれたのは紛れもなくこの愛でした～【皆月凛、星村拓夢編】【本編完結済】【カクヨム版

プロローグ

出会い【修正済】

「残念ですが、このまま治療を継続すると皆月（みなづき）さんの体に負担がかかります。なので、これ以上の治療は出来ません。それにこれだけ副作用の少ない薬で、副作用が出るのを考えますと…。これ以上、先に進む事は難しいです」

「わかりました」

その日、私の希望は絶望に変わった。私は、お会計を済ませてトボトボと待ち合わせ場所に歩いて行く。

ランチをする店につくと、ニコニコと雪乃（ゆきの）が手を振っていた。

「遅かったね」

「ごめんね」

「大丈夫だよ」

私と雪乃は、一緒に席についた。

その瞬間だった。

「私、赤ちゃん出来たの」

「お、めでとう」

「ありがとう」

「よかったね」

私は、パクパクと餌をねだる鯉のように口を動かしている。そして、雪乃はそんな私を気にすることなく続けてこう話す。

「治療で、出来たのよー！凛も治療しなよ！私の周りも皆出来てるよ」

「考えてみる」

私は、自分の口から、咄嗟に出た言葉に呆れていた。

考えた所で、今さっき病院で出来ないと言われたではないか…。

「お待たせしました」

店員さんがランチを持ってやってくる。それを口に運ぶけれど全く味がしない。私は、黙って雪乃を見つめる。まるで色彩がない。黒と白のコントラストで、モノクロ写真みたいだった。

「凛、美味しいね」

「うん、美味しい」

「順調に育って欲しい！高齢出産だからね」

「うん」

「二人は、無理だろうから。一人だけでもって思ってたからね！本当にやっと、抜け出せるよ。治療地獄から」

「うん」

雪乃の話す声が、どんどん遠くに聞こえていくのを感じる。

よかったね、うん、そうだね、って相槌を沢山うった気がする。

二時間が経って、やっとこの苦痛なランチ会が終わった。

「じゃあ、またね」

「うん」

「気をつけてね」

「うん」

私は、雪乃が、いなくなるのを見つめ続けていた。いなくなったのを見届けてから、歩き出す。歩きながら、私はあちら側へは二度と行けない事を知った。

はぁー。心の中で、何度も溜め息を繰り返しながら歩く。

ドンッ………。

『いったー！！』

ほぼ、同時に、その人と声を出していた。

「すみません」

「ごめんなさい」

私は、顔を上げる。

「大丈夫？」

「大丈夫です」

「それなら、よかった」

「そちらも、大丈夫ですか？」

「大丈夫」

「なら、よかったです」

私とその人は、頭を下げて別々の方向へ歩き出して行く。

【はぁー。ついてない。】

私は、心の中で、そう呟いてから早歩きになる。

何で、こんなのばっかり……

女でいる価値って何？

結婚した意味って何？

わからなくて、泣きそうになってくる。

幸せそうに笑う雪乃が、目の前で色褪せたのを見た時に……。

私は、絶望をより強く感じた。

切望すればする程に、感じる絶望。喉から手が出るほど欲しいその場所に、私は二度といけない。

治療出来るなら幸せだ！

その治療さえも拒まれ、拒否された私は、スタートラインにすら、もう立てないのだから……。

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