転生・Ⅰ
··どれほどの時間が経っただろうか。
俺は今、周りの見えない、ただただ昏(くら)い闇の中にぽつんと一人でいる。
··確か俺の心は死に、体のみが残され、人間としての成立条件を満たさなくなったはずだ。今も俺に纏(まと)わりつくのは「何も無い」という冷たい感覚だ。じきに体も死に絶え、死体(なきがら)を残してこの世から俺は失(う)せるはずだ。
それなのに、俺は今こうして「考えること」が、「感じること」ができている。心は喪(うしな)われたはずなのに。
··それどころか、僅かながら、どこからともなく現れた「暖かさ」が俺を包み始めた。黒に包まれた俺の心に柔らかな朝日がゆっくり、ゆっくり差し込んでゆく。
この感覚は何だろうか。この優しく、全てが許されるかのような感覚は。
··そうか。俺は、生き返るのか。
俺は全ての命が繋がる根源的な場所からそう告げられた気がした。
やがて、俺の心は完全に日の出の時を迎え、命の暖かさを取り戻した。
一度死んだ心に新たな生命が吹き込まれ、もとある体を捨て大空に飛び立ち、悠久の時を超え新たな船出を告げるための体に宿る。
そのよろこびを感じながら、再び人生を紡ぐために、俺は新たな一歩を踏み出した。
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