第65話 コミカライズ38話 公開予告SS
メァメァミァミァミァミァミァミァ。
今日のユンボのユルトは六つ子達が上げるそんな声に支配されていた。
ついに自分達が生まれる、そして登場する、そう聞いて六つ子達が作業中だというのに押しかけてきて、まだかまだかと原稿を覗き込んでいる。
正直作業の邪魔で、せめて静かにしていて欲しいものなのだが、六つ子達にそうお願いしたとしても通じるかは怪しく……仕方ないかと作業に没頭する。
そうして六つ子達が登場する誕生の場面に作業がさしかかると、六つ子達の声は更に勢いを増していく。
メァメァミァミァミァミァミァミァミァミァミァミァ。
え、自分達ってこんな姿なの? 生まれた時はこんなだったの? いやいや、もうちょっと大人っぽかったでしょ?
と、好き勝手なことを言い始める六つ子達。
六つ子達は生まれてからずっと一緒でお互いの姿や顔をこれまでずっと見合ってきたはずなのだが……過去のことは、生まれたばかりのお互いの姿はすっぱりと忘れて、最新の記憶だけで生きているようで、生まれた時も今と同じ姿をしていたはず……なんてことを思ってしまっているようだ。
だけどもこの姿はユンボがその目で見たものだ。
生命の誕生、極限状態での感動、今でも耳に残っている産声。
それらをそのまま再現しているだけで……文句を言われる筋合いは無い。
だが六つ子達にそんな理屈は通じず、理解してももらえず、もっと格好良く可愛く描いてくれても良いじゃないかと声を上げ続ける。
メァメァメァメァミァミァミァミァミァミァミァミァミァミァミァミァミァミァ。
ユンボを囲むようにして六方向から声を上げ続け……それでもユンボは折れることなくコミックを描き続ける。
そうして完成すると六つ子達は、もうこれ以上抗議しても無意味だと悟り……声を上げ疲れたのかコテンと横たわってスピスピと寝息を立て始める。
勝手にやってきて勝手に騒いで、勝手に寝始めて……。
文句の一つも言いたくなるユンボだったが、まだまだ幼い六つ子達にあれこれ言っても仕方ない。
またもそう考えて、喉から出かかっていた言葉をぐっと飲み込んだユンボは自分用の毛布を手に取り、六つ子達を一箇所に集めた上でふわりと毛布をかけてやる。
それからユンボは完成した原稿を手に取り……隣領に提出するためにユルトをあとにする。
六つ子達を残したまま、六つ子達を自由にしたまま目を離してしまい……そしてユンボがエリーに原稿を預けてから戻ってくると、ユルトの中は六つ子達の支配する空間、完全なる遊び場と化していて……流石に限界がきてしまったユンボは六つ子達を追い出すべく、ユルトの中を駆け回っての追いかけっこを始めるのだった。
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