第19話 コミカライズ6話公開予告SS
ある日の昼下がり。
倉庫でエルダンが送ってくれた荷物を整理していると『ユンボ先生宛』なる文字の書かれた布包みが目に入る。
両手で抱える程の大きさのそれは、持ってみると相応に重く、また硬い感触がするもので……一体これは何なのだろうか。
包みを開封して中身を確認したくなる……が、これはユンボに宛てられた荷物だ、勝手に開封する訳にはいかないだろう。
この包みのことはひとまず脇に置いておいて、他の荷物の片付けをすませよう……と思いながらも、どうしても中身が気になってしまった私は、荷物の整理を一旦中断し、その包みを抱えて、そうして倉庫を後にする。
私が勝手に開封するわけにはいかないが、ユンボに開封してもらえば問題ない訳で……つまりはまぁ、そういう事だ。
村の中を元気に駆け回る犬人達に声をかけて、ユンボが何処に居るかを尋ねて……クラウス達のユルトに居るとのことなので、そちらへと足を向ける。
クラウスのユルトに近づくと中からなんとも元気に、というか、大声で何かを語るクラウスと、それにわっふわっふと相槌を打つユンボの声が聞こえてくる。
……どうやらクラウスは随分と懐かしい話をユンボに聞かせているようだ。
そんなこともあったな……というか、なんというか……視点が変わるだけでこうも見方が変わるものなのだな。
しばらく待ってみても話が落ち着く様子は無く、ユルトの戸を数回叩いてノックし、そうして戸を開け中に足を踏み入れる……が、クラウス達はそんな私に気付くこと無く会話に夢中になっている。
包みを抱えながら近づいていって……それでも私に気付こうとしないので、仕方なしに適当な場所へと腰を下ろし、ガサリと抱えていた荷物をそっと床に置く。
するとその音を聞きつけたのか、耳をピンと立てたユンボがこちらに振り向き、布包みを見つけるなり、クラウスの話を書き込んでいたらしい紙片とペンを投げ出し、布包みに飛びつき、凄まじい勢いで封を剥いで布を広げ始める。
私と、私の来訪に驚くクラウスが見つめる中、ユンボは包みの中身……大きな骨を取り出して、それに飛びつきガシガシと齧り始める。
この骨は一体……? このユンボの様子は一体……?
と驚いていると、布包みの中にあったと思われるエルダンからの手紙がひらりと私の側に舞い落ちる。
一体何が書かれているのかと覗き込んでみると、そこにはユンボの本の売上が好調なこと、販売数を増やしたこと、その報酬としてユンボが以前から欲しがっていた巨獣の骨を贈る……と、そんな内容が書かれている。
どうやらこの巨獣の骨は、犬人族にとって特別な、夢中になってしまうような代物であるらしく、これこそがユンボがエルダンから受け取る報酬であるようだ。
そうしてユンボはそのまま……クラウスのユルトに居るということも、クラウスから話を聞いていたことも忘れて、夢中で骨を齧り続けてしまう。
私とクラウスは互いの目を見合って頷き、ユンボが満足するまで好きにさせてやるかと、静かに……小さく笑いながらユンボのそんな様子を見守るのだった。
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