2情報収集
さっそく、わたくしのノートパソコンを使いネットの噂を探る。
「う~ん。協賛の企業が怪しいかしら」
「うむ。☆アゲ株式会社か。後ろ暗い噂が多く出回っている企業だな」
「なんてふざけた企業名なのかしら」
あて先はこの企業にしよう。
「社長か、専務か常務かピンポイントで名指しできれば、
それに越したことはないのだが」
「調べてみるわね」
情報源は週刊誌の昔の記事までさかのぼれる。
「こわい時代になったものね。出たわ」
記事に出てきたのは当時の広報課部長。
「今は専務になっているようね。
年齢も経歴も一致しているし、彼にしておくといいかもしれないわ」
「ああ、展示室を変更されないように内密に潜入しておく必要もあるな」
「ええ。ケイミ―に頼んでみましょう」
ケイミー・ダッシュライン。
潜入し、依頼を遂行する人物だ。
容姿が金髪の美女ということで、日本で活動するのは目立つことが難点だ。
アメリカの有名大学という経歴によってカバーはされるものの、
どうしても目立つ。
「また、ケイミーに出すお金高額になるわね」
「致し方あるまい。このような業界では金が必要なのだからな。
金庫から多少の融通はしてやれよ」
「はいはい」
夫は作業を終えてワインをたしなんでいる。
「ねぇ、あなた。贅沢するならキャッシュに回してね」
「ああ。わかっているさ」
夫は罪悪感に区切りをつけたらしい。
夫婦で決めた範囲なら高級時計も買ってしまうけれど、
私はブランド物を買うためにこの作業をしてるわけではない。
金庫内のキャッシュは半分ほどだ。
あまり無駄にはできないだろう。
ファントムを名乗れるものあと少しかもしれない。
あと少しでいいから偽善の仮面をかぶっていたいのだ。
子供の嘆きが聞こえなくなるまで。
善悪を考えるなら間違いなく悪。
必要悪もあるかもしれないと自分をだまし続けることもまた疲れる。
ため息とともに金庫を閉じる。
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