1本編~夜景が見えるホテルにて~



 さぁ、始めましょ


 私たちの悪だくみ


 私たち夫婦で知恵を絞ってみましょう。


 世界にも数例しかない

 完全犯罪を



 私たちが増やしてあげる。


 警察なんて振り払ってあげる。

 だって彼らの取り締まれない法の抜け目をかいくぐり、証拠を残さない奴らを報道のもとに引きずり出すのがわたしたちの役目。



 ホテルの18階、夜景をバックに

 ワイングラスを傾けている旦那様に問いかける。

 優雅に座って何とも絵になる夫だ。

 しかし、私としてはもっと行動したい気持ちでいっぱいなのだ。


「ねぇ聞いているの? 次の獲物の話をしましょうよ」

「イヤイヤ、先日成功した報酬として、

 ワイン蔵を贈呈されたのだから。これから2週間くらいは

 年代物の味を楽しんだりして、ゆっくりしないか?」


「あなたはそんなこと言っているけれども、

 現実は贋作が飛び交っているのよ。

 そんな悪党の金もうけをつぶすのが私たちの目的でしょう?」


「わかったよ」


 四角い大理石風のテーブルの上に資料を並べる。


「今度の計画書を作ってみたんだ。

 どうかな?」

「箱根にあるガラス細工の偽物ですって?」


「ああ。高値で取引されているようだが、

 実際は沖縄の職人の習作であるようだ。

 正直、僕の目にも価値があるようには見えなかった」


 夫も私も鑑定士の資格を持っている。その目はかなり自信を持っている。

 件の作品は習作として優れているものではあっても、

 まだ価値ある作品の域には至っていない。


「ふうん。これからが楽しみな職人さんではあるけれど

 今、現在は偽物といわれることは仕方ないわね」


「展示されるのは東京の博物館らしい」


 どのような営業や企画がなされたのかはわからないが、

 日本の頂点が集結と銘打って宣伝されている。


「それはぶち壊させてもらうしかないな」


「でしょう。では予告状をどこへだしましょうか?」


「そうだな。主催者にあてるべきか、

 協賛企業にあてるべきか、よく調べねばな」




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