第2話ホームルーム
入学式を終えて、ホームルームの時間になった。
早速、クラスメイト達が桜花を囲んでいる。
俺は、それを尻目にひっそりと本を読んでいる。
誰も俺になんか注目していない。注目されることが苦手で息をひそめているのだから、いいのだが。隠密行動ってやつだ。
というか、誰だ? 年子の妹と俺を同じクラスにした奴。
(呪い殺してやりたい!)
♠️
「高校入試主席だったんだねー」
「うちってレベル高いのにねー」
「うちは幼稚園から大学まで一貫校なのだけど、桜花ちゃんは高校から入ったんだよね。出身はどこ?」
桜花は質問攻めにあって、少々、困惑気味である。
妹は、成長するに従って社交性が磨かれていったのだが…もともとは、俺と同じであまり人付き合いが得意な方じゃないんだよ。
苦手なものも不屈の向上心で克服するどころか〝得意〟にまでするのが、我が妹のスペックなのだが。
「静岡。兄と一緒に東京に来たの」
妹は、笑顔で答えた。
〝兄と〟と言った時にこちらを見たが…
(高校デビューに俺を巻き込むんじゃない!)
俺は、無言で牽制する。静岡ならぬ、サイレントヒルを決め込んでるのに!
「へぇー。桜花ちゃん、お兄さんいるんだー」
「同じクラスなのだけど…」
「双子?」
「年子なの。わたくし、早生まれで…」
「「「へぇー!」」」
「静岡から来たんだったら、こっちのことわからないんじゃない?」
あー、どんどん話が嫌な方へ流れていく。
「だったら、いろいろと案内してやろうぜ!一色兄妹を!」
「「「いいね!」」」
「お兄様、皆さんがわたくし達を案内して下さるんですって」
(出席番号の関係上、桜花の真後ろの席で)息をひそめていた俺を妹の無邪気な声が爆撃した。
「お兄様ですって」
「今時??」
「あははっ」
みんなから〝お兄様〟って呼ばれる流れができてしまった。
これに逆らうという選択肢はない。先程、妹から「帰ったらお説教です!」と言われたのだ。
妹の説教は長い。この先、いくら加点を重ねても説教がなくなる見込みはない。減点を喰らうのを避けて、説教がより長くなるのを避けるのみだ。
(加点とか減点とか兄と妹の関係で気にすることなのかわからないが…)
どう振る舞えば、桜花の地雷を踏み抜かずに済むんだ?
(陽キャどもの宴に付き合う他ないか)
図書室で本をあさる計画がー(涙)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます