年子で優等生の妹から逃げたら、「婚約破棄ですか?」とデレ始めたのだが??

ライデン

入学編

第1話入学式

「暖かな春の光に誘われて桜のつぼみも膨らみ始めた今日の良き日、私達は私立の名門・応習学院に入学出来たことを心より誇らしく思っております…」


 体育館の壇上で、朗らかな声が響く。


 俺は、その声を耳の端くらいで捉えながら本を読んでいた。


 くしくも、読んでいる小説と同じシュチエーションでびっくりだ。


 ていうか…我ながら、なんでこの小説を選んだのか…

 その小説は、妹が「さすがは、お兄様です」と年子の兄を褒め称え、恋したうことで有名なやつ。


 〝妹〟は〝兄〟を褒め称え、恋したうなどしない。


 そして、【魔法】がおとぎ話の産物で実在しなくても、兄よりも妹の方が優れていることの方はこの世にありふれていることだろう。


♠️


 長くて艶やかな髪。白く美しい肌。

知的でつぶらな瞳。目鼻だちは黄金比とはこういうものか!というくらい整っている。そしてなんとも言えない清楚なオーラ。


 壇上にいるのは、とてつもない程の美少女なのだ。俺以外の人間は、魅入られたように壇上を眺めている。


 一色桜花。年子で同じ学年の妹だ。


 妹が入学生代表の挨拶をしてるのを素直に聞けるか?いや、別に妬んでいるわけではない。

 

(周囲の人間ほど目の前の人間の才色兼備ぶりに興味を持てないだけだ)


 こいつも俺も、地元の静岡では名家とされる出なのだが…。


(妹から逃げるために東京の名門校に入ったのに!)


 なぜに妹までこの高校を受けて、首席で入学しているのか?


 この妹、容姿端麗・才色兼備・スポーツ万能。おまけに、性格まで素直で純粋(?)で面倒見までいい。家事もできるときてる。

 中庸とか平凡とかいう言葉をどこかに置き忘れできたようなバグキャラなのだ。


(中庸という言葉はこの俺が体現してるのだった)


 母のお腹に置いていってやれば良かったな。


 そんなことを考えているうちに、我が妹は頭を下げて、挨拶の紙を綺麗に畳んで楚々と階段を降り…当然のように俺の隣まで歩いてくる。


 座りぎわ、俺の耳元で


「お兄様、こんな時に小説を読んでいらっしゃるなんて壇上で挨拶している方々に対して失礼です。帰ったら、お説教ですっ!というか…なんで新入生代表の挨拶がお兄様ではないのですかっ?」

と囁く。


(いや。なんで、しれっと同居してるの)


 普通、親元を離れたら1人暮らしを謳歌したいと思うでしょ? そして新入生代表の挨拶なんて華やかなもの、俺に縁があるとでも?


 真っ直ぐ家に帰る気を無くした俺は、妹をふりきって寄り道するにはどうすれば良いか考えを巡らせるのだった。


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