〇がつ〇にち (九月三十日)

〇がつ〇にち

おかあさんがだれかとでんわしている。すこししかきこえないけど、くすりのはなしをしているからもしかしたらびょういんのせんせいとはなしているのかもしれない。


















九月三十日


電話が終わった後、僕は病院へ連れて行かれた。どうやら前回の診察から明らかに病状が悪化していたらしく、母が緊急外来を要請したらしい。新しい薬を処方された後家に帰ってそれを飲み、一晩過ごした。

朝起きた時、僕は前回の診察からの記憶が無かった。机上にあったこのノートを見て、やっと現状を把握出来た。

リビングに行き僕の顔を見ると、母はほっとしたような表情をした。「やっぱり薬が良くなかったみたい……やっと、やっと『ホンモノ』の貴方が戻ってきてくれて良かったわ」

どうやら別人格が現れている間は、顔つきも口調も知能も変わってしまうらしい。ということは、前回飲んだ薬が合わず更に人格が分裂して、僕はずっと出現出来なかったということだろうか。……詳しいことは担当医に聞かなければ分からないだろうけれど。

しかし僕は解離性同一性障害、二重人格で通院中だ。ということはあの二人以外にもまだ人格が隠れているのだろう。


果たして「ホンモノ」の自分とは何だろうか。僕がいない間に現れているであろう別の人格は自分ではないのだろうか。


……頭が痛くなってきた。

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もうひとりのぼく 花宮零 @hanamiyarei

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