ちょっとおかしいかもしれないショートショート

月居千那

目が2つしかない少女の話

 私は生まれつき目が2つしかありません。

 ほかの子はみんな、正面に1つ、後ろに1つ……。

 全部で3つ、目があります。

 だけど私は後ろに目がないのです。

 だから後ろが見えません。


「お母さん、どうして私には目が2つしかないの?」

 お母さんは優しく抱きしめてくれました。

 お父さんは悲しそうな顔をしていました。

 その時はなぜか分かりませんでしたが、今は分かります。

 きっとお母さんとお父さんは私に対して申し訳なく思っているのだと。


 私はそんなこと思ってほしくありません。


「アーシェンは後ろから車が来るのが見えないよね。怖くはないの?」

 友達のカランが聞いてきました。

「音でわかるから怖くないよ」

 カランは私の答えを聞いてびっくりしていました。

 カランは音で車が近づいてきたのが分からないそうです。

 私は人より耳がいいのでしょうか。


 後ろが見たい時は振り返って見ればいい。

 後ろが見たい時は鏡を使えばいい。

 みんなからは不便と思われるかもしれませんが、それが私の日常です。

 だから、みんなが思ってるよりは大変ではありません。

 スポーツをする時は不利になってしまいますが……。


 頑張って車の運転免許証をとりました。

 後ろが見えなくて不便だろうからと、

 夫のルーウェンが車に鏡を取り付けてくれました。

 ルーウェンとは最近結婚しました。

 とても思いやりがあって、頼りがいのある夫です。


 ルーウェンとパン屋を開きました。

 目が2つしかなくても美味しいパンを作ることができます。

 毎日楽しく、忙しく働いています。

 お客さんがおいしそうに食べているのを見るとやりがいを感じます。

 毎日がとても明るいです。


 お母さん、お父さん私を産んでくれてありがとうございます。

 私は今日も幸せです。

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