第39話 電脳戦機バーチャロン オラトリオ・タングラム(格闘ACT)

 立体的で奥行きのある箱庭な3Dのフィールドで人形ロボットを操り、対戦者と戦う格闘ゲーム(以下略格闘ACT)だが、今までの格闘ACTにありがちな縦、横、斜め移動に加え、立体感のある八方向への移動を可能にした。

 バーチャファイターでゲーセンに近い感じの移植をものにしたセガの巧みなる挑戦が仕向けられた本作は今度は格闘ACTの常識さえも覆したのだ。


 ──二本の操縦かんである棒のような別売りのツインスティックがあれば、さらにリアルな操縦が楽しめ、ゲーマーならではのアフロ行きます感が半端なかった。


 ただこのスティック、やたらと大きくて場所を取り、さらにこのゲーム専用のコントローラーだったのでお店で現物を見ただけでヒイてしまい、正直このゲームとセットでこのスティックを持っている私が知る間柄ではいなかった。


 同じスティックならバランス栄養食カロロンメートの方がお手軽に買える。

 同じ物でも食い気ありありな私にとってはその補給食を食べながらバーチャロンを遊んだ方が二度美味しかったである。


 またこのスティックが無くても、コントローラーで擬似的な操作ができ、右と左にボタンを振り分けて代わり映えしない操作が可能になっている。


 ──ロボットもサターン版に比べてリアルになり、3D表現も得意となったドリキャスになったことで画質のクオリティーがアップ。

 隅々までロボットの質感を表現したこのゲームはドリキャスを買うきっかけにさせ、ドリキャスといえばこのゲームと熱く支持されたほどだ。

 サターンと違い、二段ジャンプが出来たり、空中移動が出来たりと戦略性も増した。


 ──ただ私がこのゲームに触れたのは別名『オラタン』と焼き肉のような異名で呼ばれたドリキャスからであり、サターンで移植されてることを知らなかったので、その区別はほとんど付いていなかった。

 だが、ゲーセンではちょくちょく目の辺りにしており、この大型な巨体に乗り込んでゲームを楽しそうに遊ぶ人々の風景を見て、やっぱりセガのゲームは他のメーカーとは違う凄みがあるなと薄々感じていた。


 しかしゲーセンのスペックの方がドリキャスよりも高く、このままでは完全移植とまではいかなかったが、ドリキャスのGD ROMというCDのようなディスク(ソフト)の技術を生かし、ゲームを圧縮しての移植に成功。

 これによりゲーセンと変わらないような映像美になり、操作性同様、目と肌で楽しめるほぼゲーセンのような作りとなった。

 一部のオブジェクトがサターン版の映像を使用しているが、オラタンから始めた自分にとっては正直どの部分なのか理解できない。


 ──ロボットはガンダムのアニメーターの制作者が描いて作ったせいか、本物の人形ロボットのような滑らかな動きに。

 ビームライフルを片手に遠方へと攻撃し、遠距離でのお互いの腕を探る心理戦。


 その攻撃を建物の障害物で避けながら急接近し、武器をソードに持ち変えた接近戦。

 剣と剣を交えた白兵戦の熱き争いは遠距離とは違った楽しみがあり、これでこそバーチャロンという、手に汗握る面白さと高く鼓舞されたほどである。


 相手の猛攻のビーム攻撃を潜り抜けてスライディングダッシュをして攻撃を仕掛けたり、ビームの板に乗って上空を飛んで突っ込んだりと相手の裏をかいた攻撃ができるのも本作の魅力でもあった。


 ──右手、左手、両手攻撃という3パターンの攻撃ができ、技を使用すると画面のゲージが減り、なくなると自然回復するまで技が放てない。

 またどんな技にも隙というものが生じており、やみくもに攻撃を仕掛けても逆に反撃を受ける時がある。

 この詰め将棋のような先読みの演出は今までごり押しで勝負をしてきた格闘ACTプレイヤーの心を見事に打ち破ってくれた。

 確かに勝ち負けには運も絡んでくるが、積み重ねてきた技術があってからこその格闘ACTである。


 ──このゲームはハードの先駆けたことでもあるネットでの対戦や見て楽しめる観戦モードなどもあり、プレイヤーを新たな地へと引っ張り出してくれた。

 残念ながら今のドリキャス版ではネットでの対戦はできないが、一人プレイのアーケードモードでも充分に遊べるゲームである。


 ──舞台はネットワークの世界。

 電脳歴と呼ばれた新時代にて大型の人形ロボット、バーチャロンを操り、組織内で起こった事件や事情を戦乱に変え、最終的にはこのロボットたちの勝敗で物事を決める時代となった。

 この対決は世界に中継されて娯楽や教育の場でリアルタイムに放送され、改めて電脳世界での争いをバーチャロイドを使って知らしめて、この世界の支配下を完全なものとしたのだった──。


 ──基本的にこのオラタンにはキャラクターの説明などはないが、プレステ2などに移植されたオリジナルのマーズシリーズにてストーリーが描かれるようになり、ノベライズやドラマCDにもなった。


 ──後にプレステ4でこれまでの4シリーズのバーチャロンを一纏めにした内容のゲームが発売され、現在も大いに人気があるシリーズである。


 ──一見、格闘ACTのように見えるが、三人称視点から銃などで遠距離攻撃する姿は一種の3D シューティングを彷彿させる。

 とにかくカッコよさとリアルなロボットの動きを重視したかったの想いで作られたバーチャロンだが、こんな裏話もあった。


 ──そう、バーチャロンの企画を前にしてセガのスタッフはロボット好きの新米社員にこう告げた。


 今どきスパロボでもないのにロボットアクションなんて売れないよ。

 それでも作りたいなら自己責任でやってみなの先輩の厳しい言葉を反して、結果大ヒットとなったゲーム。 


 ──ソニック、バーチャファイター、デイトナ、サクラ大戦に続いたセガが新たに生み出したオリジナルのゲーム。

 今までの格闘ACTとは違った趣向のバーチャロンほど白熱する格闘ACTも珍しいと言える。


 箱(パッケージ)を開ければ良い意味で化けて出た、そんなゲームであルー。

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