第35話 レイクライシス(STG)

 2D縦スクロールシューティング(以下略STG)の傑作でもある『レイシリーズ』の三作目であり、シリーズの完結編となる作品である。


 サターンでの予想以上の不人気ぶりで『レイヤーセクション』での続編を取り消しになったが、その後にもワンチャンを狙うべく、色々とゲーム会社を訪問しても、『頭カチ割りNO!』の一点張り……。


 仕方なくゲームを製作したタイトー自らが重い腰を上げ、赤字を最低限にできるよう、サターンではなく、プレステに移植。

 シリーズの最後を飾った潔い意気込みのSTGでもあった。


 ──物語は初期作『レイフォース』のプロローグからとなる。


 人と機械が共存し、年号から暦も新しい機械歴となり、加速する人口爆発に対応すべく、住みよい宇宙開拓をしていた人類は巨大ネットワークにより機械の頭脳を適合したクローンを開発し、彼らにも住居や道具などを作らせて友好も築き、生活や暮らしの糧としていた。


 ──ある日、平和な世界に事件は訪れた。

 そのクローンが巨大ネットワークに取り込まれて人として考える知恵を持って人を敵対するようになり、自堕落な暮らしをする人間を滅ぼし、自分たちクローンの世界を建造しようと人類と争いを起こすようになる。


 残された人類は新兵器の戦闘機を開発し、その巨大ネットワークに入り込んだクローンを説得するために自らもネットワークの世界へと接続し、侵食を進めるのだが──。


 ──そんな形でプレイヤーが徐々に侵されていくネットの深層世界が舞台ということで、画面端にある『侵食率』というゲージがあり、それが溜まっていくことでステージや敵が徐々に変化していくという斬新なシステムだ。

 画面内に防衛プログラムとして攻撃をする敵が多かったり、それらを逃がしたりするとゲージが増えて、逆に敵を倒したり、ロックオンレーザーで破壊するとゲージは下がる。


 侵食率が100%になると強制的にボスのステージに入り、その流れで表向きのラスボスが登場する。

 しかしその時点でラスボスを倒してもバッドエンドとなり、ステージをクリアするまでは侵食率を上げないで進むという技術が優先される。


 ただしマックスになる前に侵食率を大幅に下げる敵が出現するため、普通のプレイでいきなり100%まで上がったりはしない。


 また侵食率によって敵の攻撃が変化していくため、今までのシリーズのように予測しての動きができなくなり、STGファンの腕を鈍らせた。

 さらに自機の動きも前回と同様のぎこちない動きで弾除けも命懸け。

 全く、困ったお嬢さん(パイロットは女性)である。


 ちなみに条件を達すると本当のラスボスと戦え、クリアするとグッドエンディングが見れる仕組みだが、プレステモードではステージを全部クリアして5回コンティニュー以内に全ステージをクリアするとシークレットステージに行けるという安易な展開に。

 この真のボスを倒したエンディングはレイシリーズのファンにとって感動の賜物たまものであるだろう。


 ──スタート画面で好きなステージを選択できるが、ステージは三種類しか選べず、ステージが自然に流れてボスと、ラスボスへの戦いと続くという、実質は五面というステージの短さで、今までのレイシリーズのような重厚さが足りない感があり、これではやりごたえがないとファンを失望させた。

 その点を踏まえて、プレステ版では全五ステージの選択が可能で同じステージを重複させることもできる。


 ──本作のロックオンレーザーは敵以外にミサイルや機雷などの攻撃を破壊しても点数が加算され、緊急回避のボムでは全方位に攻撃が届く拡散型の攻撃に変化した。

 シリーズ中、もっともポイント稼ぎで胸が熱くなるゲームでもある。


 ──ただ、このプレステ版はアーケード版のような高性能な部分に対抗できず、色々な部分で劣化した形となった。

 サターンで移植できなかったのも、この部分とかが関係してるらしい。


 ──容量の都合でゲーセンでの二人同時プレイから一人プレイに変化させ、ゲーセンのようにBGMが途切れることがなく、微妙にアレンジされていく展開、初めから使えるシークレットの機体に、ポケットステーションで遊べるゲーム……、


 ……さらに前作の『レイストーム』にもあった13の機体のフル装備を使用して、アレンジされた全ステージで得点を稼ぐタイムアタックモードと嬉しい仕掛けがある。


 画質はアーケード版に劣るが、それを上回ったようにサービス精神がてんこ盛りであった。

 遊び尽くして光(レーザー)で全てを壊せ! なウルトラハイになれる気分でもある。


 ──ZUNTATAが担当していたBGMも今までのレイシリーズとは変わったものだった。

 あのキレと透明感のある万人受けするシンセのカッコいいサウンドは消え失せ、ゴツゴツとしたサンバのような古風でメロディアスな音楽に変わり、これまたファンを失意の底に落とした。


 だが、井戸の底にいながらも、聴いていた音楽は紛れもなくレイシリーズであり、後に新しい形のレイシリーズの音楽として大いに評価された。


 ゲーム中ではステージの音楽が最後まで流れないので全体像は掴みづらいが、レイクライシスのアルバムで通して聴けば、10分以上あるステージ曲なんてざらにあるのだ。

 タイトルに独特の名前が付いているが、プレイヤーの脳内の世界ということでリアルある題名にしているのだろう。


 ──こうしてレイクライシスで三代に及んだレイシリーズは無事に完結を迎え、その完結記念として、後にレイシリーズのサントラを集めたCD10枚にもなるスペシャルボックスがネット限定で発売された。


 レイフォースからレイヤーセクション、レイストームにレイクライシスと、過去に発売されたシリーズのアルバムやアレンジアルバム、シリーズを説明した開発者のインタビューを網羅した濃密なブックレットなどを同梱。

 さらにこのボックスでしか聴けない未収録の曲や新曲のアレンジなどと非常に味わい深い。


 現時点では入手が困難なボックスだが、ファンとしては、生涯を共にしたいサントラのパートナーになることだろう。


 ──ゲームでも音楽でも、様々な出会いと感動をありがとう、レイシリーズ。

 そしてさようなら、終わりと始まりのレイクライシス。

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