第19話 バルクスラッシュ(STG)
「目標、右方向です」
正統派ヒロイン、レオネの声により、目標物へと向かう若きパイロットのクレス。
「きゃあああ、何やってるのよ!」
突然の敵の乱れ撃ちな猛攻にダメージを受け、その衝撃に悲鳴を上げる機体ガーデュアル。
レオネから期待される所か、クレスはとてつもないヘマをやらかしたらしい……。
──この作品はこれまでクールなシューティングゲームを製作してきたハドソンによる異色作であり、七人の荒野のヒロインから同乗者を拾い、自機のコクピットに乗せて戦闘機で、幼馴染みが敵となったテロリストに立ち向かう3Dによるシューティングゲーム(以下略STG)である。
戦闘機は飛行タイプとロボットタイプの二形態となっていて、いつでもスムーズに変形が可能で、飛行タイプはロックオンミサイルでターゲットを狙え、ロボットタイプは周囲を爆発させるボム(グレネード)が使え、ロボットの接近戦では、ガンダムのような一刀両断なビームライフルが使用できる。
攻撃力はロボットの方が上だが、移動時間の短縮のため、飛行形態で移動して、敵が密集してる所にロボットになり、ボムを放って一掃するというスタイルが一般的だ。
──フィールドは3Dの正方形の広いマップとなっていて、街中で拾った同乗者の女の子がナビを担当し、この女の子の指示の通りに攻略を進めていく。
──そのフィールド内には無数の障害物や敵が潜み、ボムを投げて、間髪入れずに次のボムを投げ込むと誘爆するようになっており、その誘爆を利用してコンボのように繋げていくと高得点が狙え、ヒロインからも大絶賛のお声がかかり、コクピット内でデレデレになってしまったりもする。
しかし、この爆発が広がる速度は意外と速いため、最初の誘爆の時点で飛行機モードでその爆風を計算して追いかけないと上手く連鎖が繋がらない仕組みにもなっている。
──まずは各方向のターゲットを破壊するのだが、どこから破壊してもいいという最高な自由さを秘めており、ターゲットを全部破壊すると、画面上を覆うような巨大なボスキャラが現れ、そのボスを倒せばステージクリア。
全7ステージあり、クリアまでの時間と得点数、敵からダメージを受けた量で同乗者のヒロインの好感度が上がり、ゲームを全クリアすると好感度のレベルの高さで変化する後日談のアニメのムービーが流れる。
この通り、美少女と同乗し、色々とヒロインが喋りながら攻略を進めていくため、ヒロインが時に世間話をしてきたり、ヒロインの好感度が上がると親密な内容を話しかけてくる。
その一方的な会話が休みなく聞こえてくるので、人によってはゲームに集中出来ず、
──これは本当にSTGなのか、色物の美少女STGなのか、サターンの影響で根っからのSTG好きになったため、いざ勢いで買ってみたものの、後ろ指を指されそうなゲームだなと頭を抱えていたが、馴れれば違和感がなく、普通なら飛行機にコンビニ弁当を持ち込み単身で乗り込み、戦場で一人で戦うはずのSTGの概念を覆す、当初では珍しかった新しい形の3DSTGでもあった。
そんな見た目はギャルゲー(美少女ゲーム)の要素が強めだが、ゲーム内容はSTGとしての基盤作りがしっかりしており、有無を言わさず、面白くてやりがいがある。
某有名ゲーム『サンダーフォース』に関わっていた製作陣が作った作品なので、
ターゲットを連鎖して粉砕してると爽快感を覚え、おまけにヒロインの育成要素もあり、それに生じてエンディングも変化するため、終始賑やかで楽しい。
あまりの面白さに病みつきにもなる恐ろしい中毒性を秘めたゲームでもある。
その笑えない中毒さに飲み込まれ、私も何度も遊んだことか……遊びすぎてもゲームのソフト(サターンのソフトはCD-ROM)は擦り切れはしなかったが……。
──ステージ6のこちら側の機体をそっくり真似た巨大な戦闘機が飛行機からロボットになって、こちらにダッシュしながら大きな剣を振りかざすのにスリルを覚え、ラスボスも意外と固く、扇状のビーム攻撃が飛び交う四角い部屋で飛行モードでヒットアンドウェイを繰り返しながら、地道にダメージを与えていく箇所などもあり、中々と歯応えもある。
まあ、ポリゴンが苦手なサターンの映像により、静止画の3D映像が荒っぽく見え、画面端に表示のヒロインのアニメなイラストの顔つきからして、昭和テイストのゲームみたいな表現だが、画面上を移動中はそんなことは気にならなく、ストレスも感じない。
いつでも変形も出来て、箱庭みたいなマップの中を自由に移動できるという快適さがこのゲームの古風さを圧倒的に上回るのだ。
偶然にも話題作の『サンダーフォースⅤ』の発売の時期と販売が重なったためか、売り上げも知名度も今いちで、余程のSTGゲームが好きなユーザー以外、このゲーム自体を知らないというゲーマーも多い。
ましてや、サターンでしか発売していないので、サターンを持っていないと遊べないという点もあり、売り上げの面に反して、他機種に移植しなかったのか、それともサターン独自のソフトにしたかったのか謎が多い。
パッケージもセピアな絵柄をモチーフにした地味なデザインで、裏の説明書きにも説明不足で購買意欲が沸かない内容でもあり、派手なゲーム内容とは違い、パッケージはひたすら地味なデザインのソフトであった。
低価格版のサタコレも発売したが、そちらの方も闇に葬られ、現在ではこのゲームは中古市場でプレミア価格と割高になっている。
ゲーム中の音楽も良いのだが、残念ながらサントラの発売も現時点でもなし。
私の頭の中はステージのボスのBGMが永久にループしたままだ………。
──バルクスラッシュ。
一見ギャルゲーな雰囲気を醸し出し、人を選びそうだが、何度も言う通りゲームの作りはきちんとしてるので、このゲームのファンは意外といたりもするのにも驚きを隠せない。
続編もない完全なオリジナル作であり、他の機種への移植先もないゲームだが、3DSTGとしての自由度と完成度は抜群に高い。
この隠れた名作を、プレステ辺りにリメイクするという点はないのだろうか……。
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