十年にも及んだゲーマーの歴史よ、今こそ灰色な不死鳥のように蘇れ!
ぴこたんすたー
第1章 天空のゲーム機、スーパーファミコン
第1話 ドラゴンクエストⅤ(RPG)
ドラクエ5。
親から貰ったお年玉を貯めて初めて購入した親不孝もののゲームソフトでもある。
当時、私の住んでいた場所はゲーム大国と呼ばれ、様々なゲームショップが軒を連ねていた。
いわゆるコンビニのちょっと高めなオヤツ感覚なものである。
ハードのスーパーファミコンは親がしれっと買っており、スーパーマリオを楽しんでいたが、ミーハーで飽きっぽい性格だったらしく、早くもお蔵入りとなった。
私もそうだけに血は争えない。
それから数年が経って、大掃除の最中に押し入れの物置きから発掘された、お歳暮の形のような箱に納められていたゲームハード。
私のゲーム人生はここから始まったと言っても過言ではない。
このゲームは結婚という大きな人生と親子の冒険をテーマにした重厚な物語で、主人公の成長記録的な、幼少、青年、親子という三部作となっていて、今までのドラクエの常識を変えた内容だった。
舞台は偉大な王族でもあった父が母を探すため、まだ幼き主人公を連れて長い旅をするという場面から始まる。
後にブッコロという少しイカれた名前を名付けた子供の虎をも仲間にし、旅を続けるのだが、ある時、バーベキューを楽しむために遺跡を歩いている最中、訳の分からん不法投棄なことを言う魔法使いの連中から、逆に父はこんがりと炭火焼きにされてしまう。
だが、父の敵討ちとして、どう抗ってもその魔法使いからやられてしまう設定が憎く感じ、何度もゲーム機のリセットボタンを停電したブレイカーを復旧させるように押す始末だった……。
そこで戦うことしか能が、いや、脳がない宇宙人な私は考えた。
レベルを上げまくってヤツに挑んだら、あんなふざけたヤツなんて余裕で倒せるんじゃね? と……。
しかし、その考えがキャラメル並みに甘かった。
ヤツは子供だからと明らかに手を抜いていたのだ。
初期の炎魔法メラをメラミ、メラゾーマに変えて攻撃したり、特定以上のダメージを受けたら回復魔法のベホイミを使う
さらに偶然に、もし倒したとしても物語の設定上、息の根は止められない。
今まで色々と助けてくれた強力なバックアップだった父を亡くし、私は初めて心から敗北の二文字を味わったのだ……。
──主人公が勇者ではなく、倒したモンスターを味方にできる魔物使いという設定も斬新である。
あの魔法使いから捨てられ、ある洞窟の奥底で眠っていた大人のブッコロ。
ヤツを再び仲間にするために、好きな女の子の髪の毛が付いたリボンのテープをちらつかせたら、見事にホイホイ仲間になって、こいつもオスなだけはあるよなって納得した自分がいた。
また『めいれいさせろ』という戦闘中の作戦ができ、強制的に言うことを聞かせて操り人形にするという王様ゲームみたいな行動が可能になった。
まあ、確かにⅣのおかしな神官みたく、ボスにザラキ(即死魔法)とか効かないからね。
そして、極めつけは二人の美少女な女の子のどっちを婚約者にしたいのかの美味しいルートだった。
一晩だけ時間をやろうと言った屋敷の領主の言葉にゲーム自体を休ませ、リアルタイムで一晩寝かせたあの日の夜は今でも忘れない。
(キモい)
ちなみに、おてんばな幼馴染みの方を選んだ方が色んな攻撃魔法が使えて頼りな存在になるのだが、もう一方の上品で大人しい方と結婚した場合、旅先で領主から様々な品物が貰える。
その時によって中身は違うが手に取ると大切な代物。
無料ガチャをくれるサービス精神旺盛な親御さん(血縁関係ではない)に感謝したくなる。
いっそ、百万くらいの経験値、頂戴よと言いたくなる。
百万じゃ、最高レベルには足りないか。
それから、あのおかしな魔法使いの手下の呪いにより、主人公と妻は体を石化させられ、何年の間も動かない石像(石像だから当然)としてこの世を過ごしてしまう。
妻の行方は不明だが、偶然にも主人公は骨董品として買われ、莫大な財産を持つお客さんの手によって大きな庭に飾られた……。
「──やっと、見つけましたわ。こんな所にいたのですね」
「感動のご対面はいいからさ、その杖で早くお父さんを戻してよ」
「お安いご用ですわ」
何年もの時が経ち、動きたくても動けない石像の前に二人組の少年と少女が現れ、少女がすもももな杖を天に掲げると、瞬く間に石だった主人公が人へと戻る。
これには家主さんも腰を抜かしてぎっくり腰になっていた。
さらに『私たちは勇者の子孫であり、あなたの子供でもあり、お父さんと同じく、石になったお母さんを捜す旅をしているんです』と涙目で(嘘つけ)母と同じ髪の色の二人に言われたら後には引けない。
こうして親子三人で母を求めての長い旅路が始まったのだ……。
──このドラクエは音楽も良い。
特にⅤによる哀愁のメロディーが流れるBGMに虜になり、別にゲームのサントラCDを購入したほどだ。
当時はゲームソフト自体からの音楽は歪み率(どれだけ音が濁らずに綺麗か)というものが大きく、純粋に音楽だけを楽しみたいのなら別にサントラを買いなさいと言われていた時代でもあった。
このドラクエのサントラは今に渡るまで何度も再販され、その度にド肝を抜かされた。
当時は三部作にもなる分厚い小説も手に入れていた。
ライトノベルというより、普通のファンタジー小説であって、中々読み応えがあり、個人的にスライムの頭から角が生え、そこから人形の人の形ができ、スライムナイトになるまでの展開が好きであった。
ちなみにこのドラクエⅤこそが私が何度も遊び倒したドラクエ作品であり、後にⅥをプレイしても一回クリアして闇に葬り、PS2で発売したⅧはラスボスにボロボロにやられ、いじけて投げ出したまま未クリアー。
それ以降のシリーズには全く触れていないし、どこまで続編が出てるかも知らない。
私にとってⅤとは運命的な出会いであり、それを越えるものは存在しなかったのだろう。
初めて自分で購入して、ドはまりしたゲームだけにそう思いたい。
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